取材協力 = トライアンフ ジャパン株式会社 取材・文 = 田中 善介
バイクとは無縁の生活を送っていた人間が、「乗りたい!」という強い想いで引き寄せたアドベンチャーツアーへのチケット。スペイン南部のマラガを出発し、フェリーでジブラルタル海峡を渡り、北アフリカのモロッコをメインフィールドに、2012年トライアンフ最新モデル『タイガーエクスプローラー』でひたすら走り続ける12日間。その旅を無事に終え、帰国したばかりの玉岡さん(兵庫県在住)に、その体験談をお伺いした。
タイガーエクスプローラーで駆け抜けた冒険ツアー
つらかったからこそ得るものは多く、大きい—-玉岡 詳悟さん
ほんの数ヶ月前に大型自動二輪免許を取得し、バイクライフをスタートさせたばかりの玉岡さん(49)。日本の道路走ってきた経験も間違いなく浅い。いきなり異国の地を走ることに不安はなかったのだろうか?
「もちろん不安はありました。でも最初はものすごく “嬉しい” という気持が強かったですね。それが、出発が近づくにつれて “不安” に変わって、ついに “怖い” と思うようになりました。日本を発つ前に瀬戸大橋を何度も走って横風に慣れようとしたり、ジムカーナをやっている知り合いの練習に参加して繰り返しバイクの操作を練習したり、会社はバイク通勤にしたり、とにかく少しでもバイクに慣れるよう努力しました。なんせシロウトですから(苦笑)」
とは言うものの、日本の道路環境と海外のそれとは大きく異なる。練習しようと思っても、そこだけはぶっつけ本番だ。
「現地に到着したら、自分が乗るタイガーエクスプローラーのキーと車検証を手渡されて “最後まで大事に持っておくように!” 言われました。バイクは自分の命を預ける相棒という意味なんでしょうね。それから簡単なブリーフィングの後すぐに出発。ほかの国の参加者たちと一緒にタイガーエクスプローラーを走らせていました。アスファルトは日本とちょっと違っていて、陽の光が反射するツルリとした滑りやすい路面でした。でも凸凹は多いし、走り出したら雨が降るわ横風も強くなるわで “いきなりコレか~!?” って、思いっきり出鼻をくじかれました。瀬戸大橋での練習がいきなり役立ちましたね(笑)」
「全ルートを通して考えられないようなコンディションでしたし、いろいろなシチュエーションを走りました。バイクでフェリーの甲板に乗るのも初めてでしたが、拳くらいの大きさの石がゴロゴロしているダートや砂漠を走る砂だらけの道路や砂の轍、ガードレールが無い山岳路、ハイペースで駆け抜けるワインディングなど、相当怖かったですね。3、4日目にグランドキャニオンみたいな場所を走ったときは、参加者の中で “怖いからここは走りたくない” って、乗るのをやめてしまった人がいたくらいです。私も “聞いてないよ~!” って感じ(笑)」
話を聞くだけでも “過激” なルートだった様子。それが初めて乗るバイクとなると、余計に緊張や恐怖が増して、いくら “憧れ” のタイガーエクスプローラーでも走ることが嫌になってしまうかもしれない。
「時差の影響もあって、走っているときは集中力を維持することに専念しました。とにかく “安全に走る” ことだけを考えていましたね。オフロード区間も結構長い距離走ったのですが、タイガーエクスプローラーはトルクが太くて扱いやすい、ビギナーにやさしいバイクです。いま思えば ABS とトラクションコントロールが忙しく働いていたみたいで、インジケーターは光りっぱなしでした(笑)。とくに感じたのが、ライダーのスキルを受け止める許容範囲の広さ。私のようなオフロード・ビギナーでも、なんの予備知識も無く走りに専念できる。だから嫌になんてならない。むしろ一緒に走っているライダーの姿を見て、場合によってはアクセルは開けたほうが車体が安定することに気付いたほどです。そこで初めて “立ったまま走る” ことにもチャレンジしてみました。“スタンディング” って言うんですか? バイクに助けられながら走っていたことは間違いありませんね!」
1日におよそ 300~400km の距離を走るアドベンチャーツアー。平坦な道でもけしてラクな距離ではないはず。当然トライアンフのサポートクルーは同行しているが、実際に先導してくれたガイドがまた “過激” だったとか。
「市街地ではまとまって移動していたのですが、郊外へ出て道幅も広く、交通量も少ない見通しの良い道路では、とても同じペースで走れない、ついていくのが大変でした! それで2日目には緩いカーブで砂利を踏んでしまい、フロントから転倒してしまいました。たいした速度ではなかったのですが、パニアケースが左右とも飛んでいってしまいました。純正ウェアは接地した部分が破けたものの、身体は無傷、バイクも5分後には再スタートしていたので、プロテクター内蔵のウェアもパニアケースもエンジンガードも、絶対に装着するべきですね! ほかの国の参加者を見ると、ほとんどが自前のプロテクターやサポーター持参だったんですよ。“バイクに長く乗ること” そして “バイクは自己責任” という意識がとても高いと感じました。スポーツにはそれぞれ必要な装備がありますよね? クルマに乗ったらシートベルトを締めるじゃないですか。それと同じように、バイクに乗るときは専用の装備が当たり前なんですよね」
玉岡さんの体験談は、無事に旅を終えることが出来たからこそ、その経験を振り返って得られたものがとても多いと感じられる。最後に、トライアンフが企画したこの壮大なアドベンチャーツアーについて、感想をお伺いした。
「こんなにコストがかかるツアーに行かせてもらえて本当に感謝しています。参加メンバーに東洋人は私ひとりで、基本的にコミュニケーションは英語。限られた期間に同じバイクで同じルートを走る。そのルートはベテラン向けでシロウトは必至。危険なポイントは教えてくれても多くは説明しない。参加者を “甘やかさない” ガイドに、これは “ご招待ツアー” ではなく本当にアドベンチャーで、はっきり言って私は場違いだと思いました。でも、ほかのみんなも辛かったと思います。2日目の夕食からはバイク談義もなく静かでしたからね(笑)。逆にそれが良い思い出になって、終わったころには達成感につながったのだと思います。正直言って、タイガーエクスプローラーじゃなかったら無事では済まなかったかもしれません。このアドベンチャーツアーのおかげで日本の道路はもう大丈夫! 6月のタイガーエクスプローラー発売が楽しみです!」