ホンダの電動二輪車EV-neoが販売スタート

掲載日: 2010年12月17日(金) 更新日: 2013年12月11日(水)
この記事は2010年12月17日当時の情報に基づいて制作されています。

バイクブロス×マガジンズ編集部 =文

これまでにもモーターショーやメディア向け試乗会などに登場し、実現化にむけて開発が進められてきたホンダの電動二輪車EV-neoが、12月24日から販売開始となることが発表された。

今回の発表にともない特筆すべきポイントは「企業向けのリース販売」がメインになるということ。先行して新聞配達や宅配ピザなどにより2010年10月から試作車10台にてテスト運用を行っているが、2010年12月から2011年3月にかけて複数の協力企業に100台を納車し、走行データ収集などのモニタリングを行うという。なお、一般企業や個人事業主への販売は2011年4月からの予定だ。

電動バイクと聞いて気になるのは航続距離と価格だろう。EV-neoは一回の充電で約34kmの走行が可能とのこと。充電器は2タイプあり、シート下に収納できる100Vの通常充電器は約3.5時間、200Vの急速充電器なら30分でフル充電となる。価格設定は車両本体が454,650円で、普通充電器付きが494,550円、急速充電器付きが574,350円だ。

このスペックだけをみると、少しハードルが高いと感じる人も多いのではないだろうか。実際に比較するとなると、2010年9月に販売がスタートした電動バイク「ヤマハEC-03」はフル充電からの航続距離は43kmで、価格は252,000円。またホンダの代表作ともいえるビジネスバイク「スーパーカブ」は204,750円で、満タンから300km以上を走破する。

航続距離も少なく価格もおよそ2倍となるEV-neoは、どのような部分で優勢となるのか。

ポイントとなるのは、「企業向けのリース販売」という点だ。配達や運搬に使われる自動二輪は、一度で走行する距離はそれほど長くない。配達が終了してから、次の配達が始まるまでのわずかな時間で充電できれば問題はないため、航続距離よりも荷物積載時のパワーと急速充電を優先したということだ。深夜や早朝でも静粛かつ軽快に走り出し、坂道発進なども苦にしないパワーはビジネスユースにも十分使える高性能ぶり。また急速充電器の場合、完全に使い切った状態からでもわずか20分で80%まで充電ができる。その利点を生かすため、充電ソケットへのアクセスの良さなども考慮されていたのが印象的だった。

また、販売形態をリースとすることで、まとまった資金が不要な点も見逃せない。発表会では参考例として、車両本体・充電器・オプションに加え、税金や保険などの諸費用、そしてメンテナンス費用も含んで月額18,997円の3年リースという案が提示された。メンテナンス費用には定期点検の他、タイヤ交換や一般消耗品の費用も含まれるとのことなので、企業にとっては事務手続きやメンテナンスの手間から開放されるというメリットもあるのだ。

電動二輪車が抱える問題の一つに、車両規定やコネクターの規格が定まっていないという社会的な背景もある。しかし、ホンダ開発陣は外枠が決定するまで待っていては間に合わないと考えている。むしろ規定のベースを作れるような優れた製品を生み出すべく、未開の地である電動二輪車というフィールドで開発に多大な労力を注いでいる。

今回のニュースは一般ライダーである我々がすぐに恩恵を受けるものではないかもしれない。しかし、近い将来あらゆる乗り物が電気化し、電動二輪の車両規定が定まり、バッテリーの価格が下がってきた時こそ、ホンダの挑戦が実を結ぶのだろう。人とオートバイの新しい関係を提案するマシンの登場、そういう視点ではとても大きなニュースだ。

(バイクブロス・マガジンズ編集部)

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