パイクスピーク・4,300mの頂上を目指す5組の日本人たち(2)

掲載日: 2014年06月03日(火) 更新日: 2014年06月03日(火)
この記事は 2014年6月3日に書かれたもので、内容が古い可能性があります。

取材・写真・文 = 山下 剛

Pikes Peak International Hill Climb 2014
4,300mの頂上を目指す5組の日本人たち

アメリカ・コロラド州で開催される登山レース「パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム」は、2012年にコースが全面舗装化となり、様相が一変した。2013年は二輪クラスに2組の日本人が参戦して話題となったが、今年はさらに3組が増え、あわせて5組がエントリーしている。

彼らは、なぜわざわざ海外のレースに参戦するのか。どうしてパイクスピークに挑むのか。6月29日に行われる決勝レースまでの間、彼らのプロフィールを紹介するとともに、パイクスピークにかける彼らの意気込みを紹介しよう。

■第2回 新井泰緒さん
「パイクスピークに行くと決まってから夢が広がった」

マシン/Kawasaki Z1000MKII
参戦クラス/Pikes Peak Challenge- UTV/Exhibition

テイスト・オブ・ツクバ(TOT)のファンなら新井泰緒さんの名を知ってる人も多いだろう。レースがまだ「テイスト・オブ・フリーランス」だった頃からZ1000MKIIで参戦を続け、2004年に初優勝。以来、5回の優勝を果たしている。

「レースで勝つことはもちろんうれしいことですけど、このMKIIがあってこそのレースですね。勝てないからといって他のバイクに乗り換えてまでレースをしたいとは思ってないんです」

新井さんがそう話すMKIIは、新井さんにとってバイク人生の大部分を共に過ごしてきた相棒で、かれこれ23年のつきあいになるという。レースだけでなく、保安部品をすぐにつけられるようにしてあり、今もツーリングを楽しむのはこのMKIIだ。

「レースをしてるというよりは、岩野さん(ブルーサンダース代表でありチーフメカニック)とおもしろいことをやりたい、という気持ちのほうが強いかもしれませんね」

新井さんの活躍はTOTだけではない。2008年にはアメリカ・デイトナで開催されたAHRMAに参戦して3位。2009年と2013年は共に優勝を決めており、すでにアメリカでもその名は知れ渡っている。

「夢のような世界でしたよね。バイクに乗りはじめた頃に憧れたアメリカのレース、エディ・ローソンの時代に戻れるわけではないけど、その空気を感じてみたいという気持ちはずっとありましたから。レースが終わった後、MKIIにナンバーをつけてフロリダをツーリングしたんです。一日中気の向くままに走って、海に沈んでいく夕日を眺めていたら、今この瞬間が自分のバイク人生の集大成なんだという思いが込み上げてきましたね」

夢が実現してしまったせいか、新井さんはそれから2年ほどはバイクに関して夢中になることができず、ヌケガラのようになってしまったそうだ。

「僕は職業レーサーではないし、まわりの期待を感じながら走るのがプレッシャーというか……」

そんな新井さんの壁をぶち破いたのは、岩野さんからのメールだった。2013年、エルミラージュ最高速トライアルに参戦した岩野さんも新井さんと同じように結果を出せたことに満足していたそうだが、パイクスピークのことを思い出し、新井さんにメールを出した。

「岩野さんは準備ができてから行こうと言うんですが、僕はもうすぐにでも行こうって(笑)」

昨年パイクスピークに参戦した伊丹孝裕さん、渡辺正人さんに連絡をして情報を収集すると、2014年に参戦できる算段が見え、参戦計画は一気に進んだ。

「パイクスピークに出ることが決まってから、夢が広がりましたよ。毎晩、眠るまでの間にいろいろ妄想しちゃいますしね(笑)」参戦を決意したときはまだダートが残ってると思っていたそうだが、「それはそれ。条件は皆同じ」と考えていたという。

「新井さんはセルフコントロールがすごいんです。99.9%で抑えられる強さと冷静さを持っているライダーですね」長年、新井さんとレースをしてきた岩野さんはそう分析する。

「もちろんやるからには真剣ですけど、まずは楽しむことが一番です。アメリカの人たちはカッコよく遊ぶのがうまいですよね。ああいうスタイルが日本でも盛んになってくれるといいなと思ってます」

新井さんがパイクスピークで何を感じ、楽しむのか。そしてどんなふうに走るのだろうか。Z1000MKIIとともに駆け抜ける4300mの高みはどんなふうに見えるのだろう。

「笑いながら帰ってきたいですね。来年、その次へとつなげていきたい」

岩野さんはそう話す。新井さん、高野さん、岩野さんたちブルーサンダースの挑戦は現地からもレポートしていく予定だ。

「まずはレースを楽しみたい」と話す新井さん。アメリカでのレースは今回が4度目だが、初めてのパイクスピークには新たな夢を描いている。

ブルーサンダースで岩野さん(左)と話す新井さん。二人は長い間ともにZを通じてバイクを楽しみ、厚い信頼で結ばれている。

5月13日、アメリカ・ロサンゼルスに向かう船便に載せるべくZ1000MKIIを梱包。デイトナ参戦で使ったコンテナを愛用している。

取材時の新井さんのZ1000MKIIは公道仕様で、高地での傾向をつかむため翌日には志賀高原方面へ出かけている。

パイクスピーク仕様とすべく、デイトナ仕様となっていたエンジンはカムやバルブタイミングを見直しつつ、1000ccから1163ccへと排気量を上げた。

インジェクション化も視野に入れていたそうだが、燃料供給はキャブレターのままいくことに決定。CRからFCRΦ35へと換装し、セッティングは現地で詰めていくそうだ。

ホイールは前後18インチのモーリス。スイングアームはブルーサンダースオリジナルで、サスペンションはオーリンズを装着。

マフラーもやはりブルーサンダースオリジナル。無塗装のスチールが放つ鈍い艶がMKIIのスタイリングを引き締めている。

~Pikes Peak International Hill Climb 2014 関連レポート~
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(バイクブロス・マガジンズ編集部)

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