パイクスピーク決勝レポート日本人ライダー全員完走

掲載日: 2014年07月01日(火) 更新日: 2014年07月01日(火)
この記事は2014年7月1日当時の情報に基づいて制作されています。

取材・写真・文 = 山下 剛

パイクスピーク、日本人ライダー全員完走!

6月29日、アメリカ・コロラド州で「パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム」が開催された。朝は快晴ながらも午後から雪や雹など天候が荒れがちなパイクスピークだが、風が強く気温が低かったものの今年は雨もなく、快晴のなかでのレースとなった。

午前8時に二輪クラスからスタートしたレースは、クラッシュによる赤旗中断が数度あったものの予定どおりに決行された。参戦していた5組の日本人ライダーは転倒やマシントラブルに見舞われたものの、全員が無事にチェッカーを受け、パイクスピークの山頂へゴールした。

■新井泰緒選手/UTV/Exhibition:11:33.613(総合53位、クラス2位)
日本人ライダーのなかでもっとも早く決勝のチェッカーを受けた新井選手。Z1000MK2の仕上がりはよく、キャブもサスもセットが決まり好調だった。
「あっという間に終わってしまった気がします。練習走行のときよりも気温が高かったせいか、タイヤウォーマーがかかりすぎてしまってタイヤが滑りぎみだったりと、決勝のむずかしさも感じましたが、楽しく走れました。ガイ・マーティンに1秒届かなかったのはやっぱり悔しいですね」

■高野昌浩選手/UTV/Exhibition:11:48.644(総合65位、クラス3位)
練習初日はキャブセットが出ていなかったものの、メカニックたちの手により次第に好調となり、決勝レースでは快音を響かせてチェッカーを受けた。
「ボトムセクションは走っていて気持ちよかったですね。失敗してしまったコーナーも多いし、コースも覚えきれなかったけど、楽しんで走れました。また来年も来たいですね」

メカニックの岩野氏によれば「セッティングの方向性はだいたい当たってましたが、そこから詰めていく作業は初めてならではのむずかしさもあった」とのことで、100%の状態には持っていけなかったというが、パイクスピークの過酷な気候にあわせたマシン作りにはメカニックとしてのやり甲斐も刺激されたようだ。

■伊丹孝裕選手/Pikes Peak Open:10:58.580(総合33位、クラス9位)
ほぼノーマル状態のマシンのパワー不足に苦しみながらだったが、昨年リタイアの雪辱を見事に晴らして完走を果たした。
「練習では何度も走っていて、けっこう長く感じるかと思っていたが、走ってみると短く感じた。タイムを詰められなかったことに悔しさは残るけれど、完走できたことは素直にうれしい。天気がよかったこともあったし、頂上からの眺めは最高でした。応援してもらった皆さんにも感謝してます」

■岸本ヨシヒロ選手/Electric Modified Bike:13:36.654(総合103位、クラス2位)
モーターの熱問題やバッテリーの残量問題などは当初予想していたよりも楽観な方向性だったものの、パワーをどこまで引き出すかのせめぎあいのなかで完走重視のセッティングで挑んだ岸本選手。コース攻略は完全にできなかったというが、パイクスピークへの山岳道路をしっかりと攻め込んでいたようだ。
「ミドルのヘアピンコーナーで転倒してしまい、モーターが停止してしまったときはレースが終わってしまったかと思いましたが、夢中で操作しているうちに再始動できてレースを完走することができたのはうれしかったです。悔しさはありますが、マシンの改良も含めて来年の課題としたいです」

■渡辺正人選手・大関政広選手/Sidecar:23:50.080(総合114位、クラス1位)
コースレコード更新の期待がかかっていた渡辺・大関組だったが、ゴール直前に燃料系にトラブルが発生してエンジン停止。リタイヤの懸念が高まるなかエンジンの再始動に成功し、なんとか完走を果たした。
「セッティングが出てきてマシンパワーを引き出せるようになっていただけに残念な結果になってしまいましたが、完走できたことはうれしいです。来年以降の課題も多く残りましたが、レースは非常に楽しめました」(渡辺)
「パッセンジャーとしての参戦は今回が初でしたが、連日の練習走行でコース攻略もうまく進められたし、レースはとても楽しかった。結果には悔しさはあるが、これがレース」(大関)

■記者の視点
パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライムは、2012年の全面舗装化を受けてロードレースになったとはいえ、4000mを越える高地、変わりやすくかつ過酷な天候と環境でのレースは、さながらラリーの様相を持つ。ハイスピード化はレースの違う面でのレースのおもしろみを増したが、同時に危険も増えているのも事実だ。そんななかで、二輪クラスをはじめ四輪クラスに参戦したすべての日本人エントラントが無事に完走を果たしたことは、素直に喜ばしい結果だ。

今年二輪クラスに参戦したエントラントは、みな口を揃えたかのように「来年も出たい」という。パイクスピークは、100年に近い伝統と歴史があり、さらに今まさに改革を迎えているレースだ。エルミラージュやデイトナといったアメリカの他のレースを知っている新井選手や高野選手もパイクスピークならではの魅力を知り、来年以降の参戦を視野に入れているし、マン島TTを知っている渡辺選手、伊丹選手、岸本選手もやはりパイクスピークに連続参戦する意思をかためている。彼らを虜にする楽しさとおもしろさ、レースとしてのやり甲斐がここにはある。

誰もが簡単に参戦できるわけではないが、門戸は決して狭くはない。興味を持ったライダーはぜひ参戦への道を開いてほしい。先達たちもそのためのアドバイスをくれるはずだ。

最後にひとつ。二輪クラスではゴール地点にてシリアスなクラッシュが発生し、一人のライダーが命を落としたことは非常に残念な出来事だ。事故の検証はこれからも進められるだろうが、現場近くにいた者としてみれば、ゴール付近のコース改修によって今後の事故を防げるように思える。レースの安全性を高め、レースを存続させていくためにもコース改修を願う。

~Pikes Peak International Hill Climb 2014 関連レポート~

■第1回 高野昌浩さん「無事に帰ることを目標に、アメリカのレースを楽しみたい」
■第2回 新井泰緒さん「パイクスピークに行くと決まってから夢が広がった」
■第3回 岸本ヨシヒロさん「TT零は自分が作ったバイクだからこそ、自分で走らせたい」
■第4回 渡辺正人さん、大関政広さん「目標はコースレコードの更新。総合順位での上も目指したい」
■第5回 伊丹孝裕さん「アスリートとして認められるレースに挑戦していきたい」
■パイクスピーク決勝直前レポート

(バイクブロス・マガジンズ編集部)

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