写真/渡辺 昌彦 取材・文/佐川 健太郎 衣装協力/KUSHITANI
今回のテーマは低速バランスについて。最終的にはUターンをスマートにこなすためのスキルと考えてください。低速バランスは一見地味ですが実はテクニックの宝庫。バイクは速度が出ている時は何もしなくてもまっすぐ走り、安定して曲がってくれますが、およそ10km/h以下ぐらいの速度になると人間が自分でいろいろな操作をしたり、ボディバランスで重心を変えたりして操る必要があります。つまり、低速になるほどライダーの技量が問われるわけです。だから低速バランスは難しいし苦手意識を持っている人も多い。
でも基本となるスキルを整理して考えると、やるべきことは見えてきます。低速バランスには3つ重要なポイントがあります。1つめは「スロットルを一定」に保つこと。スロットルは微開かつ一定にします。目安としては、アイドリングが1500rpmだとするとプラス1000rpm程度として、2500rpmぐらいをキープするといいでしょう。やってはいけないのがスロットルを煽ること。スロットルを開けたり閉めたりすると回転数が不安定になり、閉めた時にトルクの谷にはまってエンスト。最悪は立ちゴケしてしまうリスクが高まります。
2つめのポイントが「半クラを一定」に保つこと。クラッチレバーには遊びがあり、完全に切れるまでには幅があります。ただし、その中の半クラのゾーンは2cmぐらいしかなく、その中で最も半クラが安定する位置を探して一定にキープすることで回転数が安定します。やってはいけないのが断続クラッチ。クラッチを握ったり離したりを繰り返すとスロットルと同様エンストの原因になります。
3つめのポイントは「リアブレーキ」です。低速バランスではフロントブレーキは使いません。例えばUターンする場合、車体を傾けてハンドルを切ってターンしている最中にブレーキレバーをカツンと握ってしまうと、前輪の動きを止めてしまうため即立ちゴケに。フロントブレーキは一切触らずにブレーキペダルを一定に踏んでいくのが安全。一定の力で入力しますが、実際には上りや下りがあるので路面状況に合わせて入力を加減するのがコツです。まとめると、スロットルと半クラを一定にキープしつつ、リアブレーキで速度を微調整するのがポイントになります。詳しくは下記の解説をご覧ください。動画も合わせてチェックしていただくと動きのイメージが分かりやすいと思います。
■3つの操作を一定にキープ
歩くような極低速で上手くバランスをとるためのポイントは3つ。「スロットル一定」「半クラ一定」「リアブレーキ一定」。その中で微妙な速度とパワーの調整はリアブレーキで行う。つまり一定要素をどれだけ増やせるかがポイント。
■アイドリング回転+αが目安
小指と薬指を軽く添えるイメージでスロットルグリップを軽く握り、スロットル微開のまま位置を固定してしまう。フロントブレーキは一切使わないのでレバーから指を離す。
目安としてはアイドリング回転+1000rpm程度。トルクの弱い小排気量車やトルク変動の大きい単気筒などは+2000rpm辺りまで上げておくと安心。慣れてきたら回転計を見ずに音で判断する。
■半クラが安定する位置を探す
低速バランスでは繊細な操作かつ半クラ一定をキープし続ける力が必要になるため指は4本掛けがおすすめ。自分がやりやすいレバー位置の調整も大事だ。
クラッチレバーは握るというよりも「引いて固定する」イメージにすると疲れにくい。遊びを取って抵抗が出たところから半クラが始まる。そこから5mm~10mm程度の範囲がスイートスポットだ。
■速度調整の切り札
速度調整はリアブレーキで行う。ステップバーに土踏まずを置き、踝をピボットにして足先を回転されるイメージでじんわりとペダルに入力。上り坂では少し弱めて加速、下り坂では少し強めて減速など微妙な速度調整を担う。
ブレーキペダルは親指の付け根で押す感じ。滑って外れないように爪先を内側に入れつつ、ブーツの中で親指を曲げて力を入れながらやると感触をつかみやすい。
■ハンドルを小刻みに切る
歩くような極低速ではハンドル操作でバランスをとるのがコツ。これをステップワークや体重移動でやろうとすると、かえって大きくバランスを崩してしまう。頭と体はバイクのセンターから動かさず、バランスが大きく崩れる前に小刻みにハンドルを切って補正していく。ハンドルが遠い場合は少し前に座りニーグリップをしっかりと。