小平晴史=文 磯部孝夫 / 山下剛=写真 取材協力=アライヘルメット
信号待ちで止まるたびにシールドが曇り始め、霧がかかったように視界が白く覆われる。寒い夜によくある、そんな状態のまま走り出したら…楽しくないどころか、状況判断を誤って事故につながる可能性もある。かといって、曇りを防ぐため、停止するたびにシールドを開ける手間も、煩わしく感じるものだ。冬から春先にかけてよくあるこういう状況に対して、クリアな視界を確保し、ライディングの楽しさと安全性を確保するためのシールドが、アライヘルメットから発売されている。
マックス・ビジョンシールドは、薄型のピンロックシートを内面に密着させる二重構造を採用。シールド内外の温度差を抑え、防曇効果を発揮するアイテムだ。同社では、海外向けに4年ほど前からピンロックシートを採用していたが、シールドの縁に近い部分を二重構造にできていなかった。そのため前傾姿勢で視界が確保しにくい問題があったのだが、それに対し、シールド本体とセット開発したマックス・ビジョンシールドは、二重構造をほぼ全面まで拡大。通常見える全ての範囲でクリアな視界を確保している。
実際に、冷たい雨が降る夜に使ってみたが、シールドを閉めた状態でしばらく放置しても確かに曇りにくいし、強制的に息を吹きかけても曇るのは一瞬で、すぐにクリアな状態に戻る。防曇効果は非常に高い。通常のシールドならあっという間に曇るこの状況で、視界が妨げられないのが、かえって不思議だった。
安全確保の動きに目を向けると、ここ数年、ボディプロテクターの充実度は目をみはるものがあり、アンチロックブレーキの進化も著しい。しかし、そういった万一に備えるためのアイテムがどんなに進化しても、乗り手に状況判断が委ねられている事実は、基本的に変わらない。奇しくも今号の巻頭特集のテーマは「リスクを少なくする走りの工夫」だが、クリアな視界を確保して正確な判断を促す技術は、最も効果的な安全対策のひとつでもある。