私は先週、「NSR250Rはポップだ」と力説しました。詳しくはこちらをご覧ください。
しかしNSRはポップである前に硬派だと思うんです。
NSRのどこに硬派の要素があるかというと、エンジンの「HONDA RACING」という文字の刻印です。この刻印は、本田技研工業株式会社の2輪レーシング部門である株式会社ホンダ・レーシングがつくったことの証(あかし)です。
株式会社ホンダ・レーシングこそ、かの「HRC」です。
NSRは市販バイクでありながら、レーサーでもあるのです。硬派の条件にストイックさがあるとすれば、レーサーほどストイックな工業製品もないでしょう。
だからNSRは硬派なのです。
ではなぜNSRは、ここまでカッチカチの硬派になったのでしょうか。
ヤマハRZ250の成功に度肝を抜かれたホンダは、VT250Fで見事に巻き返しますが、しかし2ストで売られた喧嘩を4ストでやり返しても、どことなく納得できません。
そこでホンダは2ストのMVX250FとNS250Rを立て続けに出しますが、ヤマハに「化け物TZR250」を出されて息の根を止められてしまいます。
MVX、NSと2連敗したホンダはブチ切れます。TZRはレーサーと同時に開発されましたが、それでもまだ理性がある内容でした。ところがホンダは「もうレーサーに保安部品をつけて公道を走らせるしかない」と覚悟を決め、NSR250Rをつくったのです。
レーサーとして開発されたNSR250Rは、世間では「レーサーレプリカ」と呼ばれていますが、その本性は完全なレーサーです。
その証拠が先ほど紹介した「HONDA RACING」の刻印であり、そしてこのメーターです。
しかもNSRのメーターはスピードメーターとタコメーターと水温計しかなく、さらにスピードメーターだけ取り外すことができます。サーキットではスピードメーターが要らないからです。ホンダはこれを演出でやったのではなく、「NSRはレーサーだから」やったのです。
だから30年経ったいまでも、NSRにはすごみがあるんだと思います。