【ライターコラム】40代リターンライダー「NSR250R」を買う/その15「色褪せない硬派、むき出しの本物」

掲載日: 2018年12月12日(水) 更新日: 2019年01月16日(水)
カテゴリー: 日刊バイクブロス  タグ: ,  
この記事は2018年12月12日当時の情報に基づいて制作されています。

私は先週、「NSR250Rはポップだ」と力説しました。詳しくはこちらをご覧ください。
しかしNSRはポップである前に硬派だと思うんです。

NSRのどこに硬派の要素があるかというと、エンジンの「HONDA RACING」という文字の刻印です。この刻印は、本田技研工業株式会社の2輪レーシング部門である株式会社ホンダ・レーシングがつくったことの証(あかし)です。
株式会社ホンダ・レーシングこそ、かの「HRC」です。

私の1989年式NSRのエンジンにもしっかりレーサーの証が刻まれています。

NSRは市販バイクでありながら、レーサーでもあるのです。硬派の条件にストイックさがあるとすれば、レーサーほどストイックな工業製品もないでしょう。
だからNSRは硬派なのです。

ではなぜNSRは、ここまでカッチカチの硬派になったのでしょうか。
ヤマハRZ250の成功に度肝を抜かれたホンダは、VT250Fで見事に巻き返しますが、しかし2ストで売られた喧嘩を4ストでやり返しても、どことなく納得できません。

2スト界の最高レジェンド、RZ。(写真提供:バイクブロス)

そこでホンダは2ストのMVX250FとNS250Rを立て続けに出しますが、ヤマハに「化け物TZR250」を出されて息の根を止められてしまいます。

なんかうまくいかなかったMVXとNS。(写真提供:バイクブロス)

レーサーと同時開発することで化け物と化したTZR250。(写真提供:バイクブロス)

MVX、NSと2連敗したホンダはブチ切れます。TZRはレーサーと同時に開発されましたが、それでもまだ理性がある内容でした。ところがホンダは「もうレーサーに保安部品をつけて公道を走らせるしかない」と覚悟を決め、NSR250Rをつくったのです。
レーサーとして開発されたNSR250Rは、世間では「レーサーレプリカ」と呼ばれていますが、その本性は完全なレーサーです。
その証拠が先ほど紹介した「HONDA RACING」の刻印であり、そしてこのメーターです。

私のド・ノーマルNSRのメーター周り。このアングルだとメーターが見えないでしょ。

見てくださいこの「仕方なく付けました」感満点の取り付け方。メーターもむき出しですし。

しかもNSRのメーターはスピードメーターとタコメーターと水温計しかなく、さらにスピードメーターだけ取り外すことができます。サーキットではスピードメーターが要らないからです。ホンダはこれを演出でやったのではなく、「NSRはレーサーだから」やったのです。
だから30年経ったいまでも、NSRにはすごみがあるんだと思います。

ホンダNSR250Rの当時のカタログを見る

(ライター アサオカミツヒサ)

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