【ライターコラム】道東の引力・なぜバイク乗りは北海道を目指すのか?/ 多和平編① 年季の入ったドゥカティの加藤さん

掲載日: 2018年09月05日(水) 更新日: 2018年09月03日(月)
この記事は2018年9月5日当時の情報に基づいて制作されています。

多和平(たわだいら)キャンプ場は、地平線がぐるりと見える道東(北海道の東部)の名所で、標茶(しべちゃ)町にあります。古いドゥカティを駆る兵庫県三田市の加藤さんは、ここか、道北(北海道の北部)の稚内に、毎年8月に出没します。
今年(2018年)は多和平を選び8月11~30日の日程で滞在していました。

多和平の駐車場で出会った加藤さん。「このバイクに乗っていると、いろんな人が声をかけてくれるから、いいんだよね」。

加藤さんが長期滞在している多和平キャンプ場。地平線を感じることができます。

加藤さんのドゥカティは、見た目は900SSですが、実は900マイク・ヘイルウッド・レプリカ(MHR)です。あの鮮烈な赤と緑のフルカウルや、ざっくりとえぐれた大型ガソリンタンクなどをすべて取り外し、900SSの外装に取り替えてしまったのです。

加藤さんのドゥカティは、見た目は完全に900SSですが元は900MHRでした。赤フレームがその「証拠」です。

これがオリジナルの900MHRです。(出典:VIRGIN DUCATI.com)

加藤さんは1984年にこのドゥカティを新車で買い、1986年から毎年北海道に来ています。走行距離は12万キロを超えました。

加藤さんのドゥカティのコックピット。メーターは10万キロを超えたため1周回ってしまい、さらにそこから23,413km走っています。 

このドゥカティは、とにかく壊れないそうです。オイルがにじんだり、夏場にクラッチ板が溶けて(と加藤さんは言っていました)クラッチが常につながらない状態になってしまうことは、加藤さんとしては故障ではないそうです。

ピカピカに磨いたキレイさではなく、使い込んでいるからこその輝きを放つ加藤さんのドゥカティ。

昨年2017年の道東の旅では、燃料コックからガソリンがだだ漏れし、中標津(なかしべつ)町という道東のマチのバイク店に持ち込みましたが、当然ながらそこには年代もののドゥカティの部品などありません。
そこで加藤さんは神戸市のいきつけのバイク店から燃料コックの部品を中標津のバイク店に送ってもらい、修理してもらいました。当然これも故障に数えていません。

昨年、中標津で直した燃料コック。

加藤さんは、このドゥカティでないと「走っている気」がしないのです。BMWもZ2もハーレーも乗りましたが、「すぐ飽きる。眠くなる」のだとか。
しかしこのドゥカティで走っているとニヤニヤが止まりません。トンネルでドゥカティの排気音が響くと、いまだに胸が高鳴るそうです。
「ドゥカティを転がしたくて道東に来ている。信号がない道を巡航していると、調子がいいんだ。だから観光もしない」

900MHRの外装を900SSに取り替えたのも、長く乗るためなのです。10kg以上軽くなって取り回しが楽になりました。

加藤さんは道東と道北の「空気が好きだ」といいます。函館などの道南や、札幌などの道央は「本州の臭い」がして好きではありません。道東・道北のエリアに入ると、空気が変わることを実感できます。
「1969年から71年にかけて日本一周したんだ。そのとき、もう一度訪れたいと思ったのは、唯一北海道だった。そのときの拓かれていない北海道の雰囲気が、道東と道北には残っているんだよ」

加藤さんのテントです。旅慣れている人のテントは大体ビシッとしていますね。

(ライター アサオカミツヒサ)

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