NSR250Rには5世代あり、私の1989年型のNSR250R(89MC18)は、その他の4代のNSRと比較して地味である、という話を以前にしました。
確かに、国産レプリカバイク史上最高のカラーリングといわれるロスマンズカラーは、88MC18前期とMC21とMC28にはありますが、89MC18後期にはありません。
しかし、89NSRは、88のわずか1年後に出ているのです。マイナーチェンジは普通、販売のテコ入れのために行います。しかし当時、88NSRの販売は絶好調でした。
すなわち89NSRは「勝ち続けるためにやらなければならない」ことがあったので、採算度外視で生まれたわけです。だから89NSRは、ある意味で最良のNSRなのではないかと思うわけです。それでは89NSRのハイライトを紹介しましょう。
NSRのメーター回りはご覧のとおりスカスカです。「メーター? どうせすぐに取り外してしまうんでしょ」とでもいいたげなつくりです。社外品を取りつけたようにも見えますが、純正かつノーマルの姿です。
そして他のNSRにはない、89NSRだけの特徴がこれです。チャンバーを無理やり細いパイプで持ち上げて、リアシートの「跳ね上がり」と平行になるようにサイレンサーを置いているのです。その結果どうなったかというと、この美しいリア回りをつくり出したのです。
どうですかこの格好よさといったら。リアランプの2つの丸とサイレンサーの2つの丸で、計4個の丸をつくっています。V4レーサーNSR500を彷彿とさせます。
2000年代に入って、SSでセンターアップマフラーが大流行しますが、89NSRのこのヒップは、そのはしりといえなくもないでしょう。
バイクのマフラーは、「上」そして「中央」に近いほど格好よくなるという方程式があり、89NSRは見事に当てはまるのです。
そしてこれは89に限ったことではないのですが、NSRはアルミとステンレスを贅沢に使っています。
私は洗車が好きなのですが、この部分を洗うときは本当に楽しいです。「コストダウンなんて一切考えていないつくり」であることはひと目でわかります。
さらにNSRはプラスチック部分のつくりも巧みです。
上の写真はリアシートのエアダクト部分です。わざわざ2つ穴をあけているところに、妥協のなさを感じます。
次に見ていただきたいのは、フロントブレーキのブレーキフルード容器です。
これでノーマルなのだから驚きます。
そして最後に紹介したいのは、シートです。
NSRのシートは一見するとレーサーのように「スポンジのようなもの」を貼り付けているだけにみえますが、実は肉厚のしっかりしたつくりになっています。
89NSRはNSRのなかでは最も不人気ですが、それでも所有欲を満たす要素がこれほどあるのです。