ファンティックが先に開催されたダカール・ラリー2023に「XEF450 Rally」を投入した。ライダーはイタリアの超ベテラン、67歳のフランコ=ピコを中心にアレックス=サルヴィーニ、ティツィアーノ=インテルノの3名。2週間に及ぶレースでフランコ=ピコは親指を骨折するというアクシデントに見舞われながらも総合72位、ベテランクラス8位という結果を残した。
67歳にして29回目のダカールを完走。ベテランクラス8位を記録。2022年に続き、XEFラリーモデルの性能を証明
モータリスト合同会社(東京都大田区)が日本における正規輸入代理店を務めるイタリアのFANTIC Motor(ファンティック・モーター)。50年を超える歴史のあるブランドが、昨2022年から世界で最も過酷なラリーとして知られる「ダカール・ラリー」に挑戦している。
マシンは、ファンティック社がその構成、セッティング、仕様を吟味して作り上げた「XEF450 Rally」だ。2022年のダカールでデビューし見事に初年度を完走、同年秋のEICMA(ミラノ国際モーターサイクルショー)で市販モデルを正式に発表したこのマシンは、2023年シーズンの世界のラリーを席巻すべく、ヨーロッパを中心に好調に受注を伸ばしている。
その口火を切るのが、2023年1月のダカール・ラリーだ。2022年からファンティックとタッグを組むイタリア人の超ベテランライダー、フランコ=ピコを中心に、同じくイタリア人のエンデューロライダー、アレックス=サルヴィーニが上位入賞を狙ってダカールに初挑戦。また、イタリアでユーチューバーとしても知られるティツィアーノ=インテルノも参戦し、チームとしての陣容も整っての参戦となった。
2023年のダカール・ラリーは、1月15日に、その2週間に及ぶ全日程を終えた。かつてないほどのスピード・レースであり、また厳しい天候の変化にも見舞われ、非常にタフなレースとなったという。サウジアラビアを西から東へと横断する冒険の旅は、状況の変化に応じたプログラムの度重なる変更、ロングステージ、ブラインドナビゲーション、ハイスピードなスペシャルステージへのチャレンジと、チャレンジャーたちを休ませる間を与えないほどであり、パイロット(ライダー)たちは極めて限られたマージンの中でゴールを目指したのだった。
ファンティック・レーシングチームのフランコ=ピコは、ラリーのフィニッシュライン、サウジアラビアのダンマームで、旅をともに走り切ったパートナー、FANTIC XEF450 FACTORYを表彰台に乗せるべく、2週間の厳しい戦いを走りぬいた。67歳を迎え、ゼッケン67を与えられた砂漠のレジェンドである超ベテランライダーは、最後の2ステージではジャンプに失敗して右手の親指を骨折するというハードアクシデントにも見舞われたが、激痛に耐え、不屈のライディングでマシンを昨年同様の総合72位、ベテランクラス8位へと押し上げ、2023年のラリーを終えたのだ。
ピコにとって29回目となったこの挑戦は、ファンティックにとってもマシンの開発が正しい方向に向かっていたことを証明する重要な結果を残すことにつながった。2021年に始まったラリー・プロジェクトは、ベテラン・パイロットのピコによって開発のスピードを高められ、信頼性の高いラリーマシンとしての評価を得ることに成功したのだ。
ファンティックとピコは2022年シーズンを通じて世界のラリーに挑戦を続け、開発の進んだマシンは市販車として、ファクトリー・サポートを受けられない一般のライダーがラリーを楽しむことができるモデルを、リーズナブルな価格で提供するまでに至ったのである。ピコの完走は、ファンティック・ファクトリーと開発部門の不断の努力に応えるものであり、成果につながったものと言えるだろう。
「ラリー中は何度もトラブルに見舞われ、厳しい局面も少なからずあったが、歯を食いしばって耐え忍んだ。無理をして先を急ぐよりは完走して結果を残すべく、順位を気にしないで走ったのだ。悪天候が続き、レース・ペースを保つことが非常に困難な日々となったが、極限の状態でマシンをテストできたといってもいいだろう。テストは成功し、マシンは非常に信頼性が高く、またスピードもあることが証明されたのだ。過去2年間にわたって重ねられてきた経験が、ファクトリー・モデルにきちんと反映され、それが正しく機能したことは本当に喜ばしい。レース中盤からは、他のイタリア人ライダーとタッグを組んで、最も困難なセクションでは互いに助け合いながらマシンを前へと進めてきた。親指を骨折したとき、診察したドクター(医者)がレースを断念するよう勧めてきたけれど、あと2日、ゴールまであとわずかのタイミングで、僕は到底レースをあきらめることなんてできなかった。医者のいうことも聞かず、まるで犬ころのように苦しみながら走ったけど、ついにここ、フィニッシュラインにたどり着くことができた。そう、やり遂げたんだ!」
「レーシングチーム、開発チーム、メカニックたち、FANTICのみんな、そしてSNSで応援してくれた世界中のファンに心から感謝しているよ。一方でチームメイトの結果は残念だった。ダカールでは落とし穴が常に付きまとい、それを事前に察知することは決して容易ではないからね。1年かけてここまでたどり着いたのに、ちょっとしたことであきらめざるを得なくなる。でも、それがダカールなんだ」
初のダカール・ラリーへのチャレンジとなったアレックス=サルヴィーニとティツィアーノ=インテルノにとっては、実際、極めて不運なダカールだったといえるだろう。2013年のエンデューロ世界チャンピオン(E2)であり、その前後に幾度となく表彰台に上り、またISDEでも活躍したサルヴィーニは、そのライダーとしての経歴をモトクロスからスタートさせ、イタリア選手権のチャンピオンやヨーロピアンスーパークロスのチャンピオンを獲得しているが、砂漠への挑戦は全く初めてのことだった。
ラリーの前半はステージによっては優勝争いに絡み、総合トップに立ったこともあったが、ステージ8でアクシデントに見舞われ、リタイヤを余儀なくされた。ティツィアーノ=インテルノは1月1日のスペシャル・ステージで転倒、肩の脱臼を負い、ステージ4でリタイヤとなった。
2023年のダカール・ラリーはこうして終幕を迎えたが、ファンティックのラリーへの挑戦はまだ始まったばかり。冒険の行く末にぜひご期待いただきたい。
モータリスト合同会社(2023年1月17日発行)