BMWモトラッドがプロトタイプボクサーで超絶カスタムを製作! そこから見えてくるのは……

掲載日: 2018年12月10日(月) 更新日: 2018年12月10日(月)
この記事は2018年12月10日当時の情報に基づいて制作されています。

2018年12月2日にパシフィコ横浜で開催されたヨコハマ・ホットロッド・カスタムショー。日本をはじめ世界各国のトップビルダーが集う世界的なカスタムショーとして毎年多くの来場者を集めるショーで、BMWモトラッドは世界初公開となる新型のプロトタイプボクサーエンジンを搭載したカスタムバイク「DEAPRTED」を発表した。


<Photo>BMW Motorrad

ボクサーエンジンであること以外、排気量などのスペックは現段階では一切明らかになっていない「DEPARTED」。BMWモトラッドは世界に1台しかないこのエンジンとそのシャフトドライブユニットを使ったカスタムバイク製作を滋賀県のカスタムビルダー「カスタム・ワークス・ゾン(Custom Works ZON)」に依頼。カスタム・ワークス・ゾンは約3ヶ月という短期間で前衛的なカスタムバイクを作り上げた。


<Photo>BMW Motorrad

エンジン単体とシャフトドライブユニット以外、すべてをハンドメイドで製作された「DEPARTED」。これまでも刺激的なカスタムバイクを数多く手がけてきたカスタム・ワークス・ゾンだが、今回のプロジェクトは新型プロトタイプエンジンを使ったBMW本社の依頼という前代未聞のもの。情報漏れが一切許されないプロジェクトとあって、カスタム・ワークス・ゾンでは専用の作業場を新たに設けて超極秘で製作に当たったのだという。

何より目を引くのは世界初公開となる新型ボクサーエンジンのプロトタイプで、その詳細は一切不明。見たところ、シリンダーは現行のGSやRTに搭載される水冷のR1250系や、R nineTに搭載される空油冷R1200系と比較しても相当に大きいことだけはハッキリしている。

じつはこのマシンのサインボードやテールカウルには「R18」という、型式のような名称が添えられていたが、それが何を意味するのかも現段階では明らかになっていない。BMWのかつてのモデルを振り返ると、その数字は排気量を示す場合もあるのだが、そうではないパターンもあったりするので、単純に「1800ccか?」と答えを出すのも早計だろう。

詳細が一切明らかにされていないなかで「DEPARTED」のエンジン外観から分かることは、ボクサーエンジンであることと、水冷ではないことくらいだ(空冷、または空油冷?)。ただ、見逃せないのは、シリンダーの上側に2本の金属パイプが鎮座していることだ。普通に考えればこれはプッシュロッドカバーである。

となると、このエンジンのバルブ駆動システムはOHV(オーバー・ヘッド・カムシャフト)であることが濃厚だ。BMWの空冷OHVボクサーツインは、1995年、1996年あたりにその幕を下ろしているが、このエンジンが示唆するものは一体どういうことなのだろうか。「DEPARTED」という単語が持つ意味を考えると、それもまた意味深である。

今回のカスタムバイク製作にあたって、カスタム・ワークス・ゾンに渡されたのはエンジン単体とシャフトドライブユニットのみ。そういうこともあって、走行にまつわる補機類はCWZの手によってワンオフでフィッティングされている。この「DEPARTED」では燃料供給をキャブレターとしており、現車ではDellorto(デロルト)のPHM40(=ベンチュリ径φ40)を装着。このキャブサイズからも排気量はそれなりに大きい、ということだけは想像できる。

エンジンのフロントカバーはマシニングセンターによる削り出しで、切削後は丹念にポリッシュされている。BMW伝統のキドニーグリルをイメージしたようにも見えるし、戦前四輪車の大型グリルのようにも見える。その両サイドには小さなスリットがいくつも切られているが、そこはメッシュに。ということはこのフロントカバー内に収まるモノは……メカ好きならこの外観から色々な想像を巡らせることができるはずだ。

圧巻のシルエット。フロントホイールは21インチ、リアホイールはなんと23インチ。ホイールはいずれも削り出しによるワンオフだ。

現行の水冷ボクサーであるR1250系では左出しとなるシャフトドライブユニットだが、「DEPARTED」では現行のR nineT系と同じく右側にレイアウト。これもエンジン内の様子を想像する重要なヒントだろう。今回のカスタムマシンでは、シャフトドライブユニットはBMWが提供したユニットをそのまま使うが、スイングアーム自体はワンオフで製作されている。

外装はアルミ叩き出しのワンオフ。シートカウルには「R18」の文字が入り、サイドカバーにはプロペラマークも。フレームは径の異なるスチールチューブを組み合わせて製作された。

フロントサスペンションはトラペゾイダル式で、このライトカウル裏にサスペンションを配置した独特の機構だ。ワンオフのカスタムバイクだけあって、車体各部に様々なチャレンジが盛り込まれている。


「カスタム・ワークス・ゾン」のビルダー吉澤雄一氏(右)と植田良和氏(左)。
<Photo>BMW Motorrad

 

BMWモトラッドとカスタム・ワークス・ゾンはこの「DEPARTED」でヨコハマ・ホットロッド・カスタムショー二輪部門で最高の栄誉である「Best of Show Motorcycle」のアワードを獲得。さらにイタリアのチョッパーマガジン「Low Ride Magazine」が選ぶ「Low Ride Magazine’s Pick」、タイ・バンコクのホット・ロッド・カスタムショーによるアワード「Bangkok Hot Rod Custom Show’s Pick, Thailand」も獲得した。

プロトタイプエンジンを使って秘密裏にカスタムバイク製作を進め、世界的なカスタムショーの場でお披露目するというBMWモトラッドの仕掛けは、エンジンの詳細をあえて明かさないというスタンスによってカスタムフリークたちに大きな衝撃を与えた。と同時に、既存のBMWファンたちに対しては「もしかすると新型ボクサーが登場するのか?」という一種の期待感を持たせることにもなったはずだ。こうした反応はBMWモトラッドとしてはもちろん織り込み済みだろう。前代未聞のプロジェクトを経たホット・ロッド・カスタムショーの出展は「過激なカスタムバイクの発表」という単発の話題として終わらせない、したたかな彼らの戦略が透けて見えているようだ。

 

Text/RyoTsuchiyama
Photo/BMW Motorrad, RyoTsuchiyama
Special Thanks/Mooneyes, BMW Motorrad

(バイクブロス・マガジンズ編集部)

このページの一番上へ

サイトのトップページへ

このページの一番下へ