MotoGP250ccクラス最後のチャンピオン、青山博一選手がシーズン中のエピソードを紹介

掲載日: 2009年11月26日(木) 更新日: 2013年12月12日(木)
この記事は2009年11月26日当時の情報に基づいて制作されています。

取材協力 = 本田技研工業株式会社

11月26日、東京青山の本田技研工業本社にて、今シーズンのMotoGP250ccクラスでワールドチャンピオンとなった青山博一選手(スコット・レーシングチーム)の記者会見が行われた。

最終戦のスペイン・バレンシアGPで、自身のコースアウトやライバルの転倒など、劇的なレース展開を経てチャンピオンを獲得した青山選手は、「多くの方々から協力してもらって、また走るチャンスをもらいました。それを活かすことが今年のモチベーションでした」「そういう意味で、今回のチャンピオンは僕が獲ったのではなく、協力してくれた皆さんの気持ちが獲らせてくれたのです。応援ありがとうございました」と挨拶。会場からは盛大な拍手が沸きあがった。

その後、約1時間にわたって青山選手は、シーズンが終った今だからこそ話せるの非常に興味深いエピソードを紹介してくれた。以下、その一部をご紹介しよう。

~チームの移籍に関する苦労について~
今シーズンの契約も進んでいた去年のマレーシアGPで、突然チームが撤退するという話しを聞きました。チームがない状態で厳しいオフシーズンを過ごしましたが、逆にかなり早い段階でチームの撤退を知ったので、スコット・レーシングに加入することができました。そういう意味ではラッキーだったと思います。また、一度ホンダを離れてまた戻ってきた人はあまりいませんから、受け入れてくれたホンダに感謝しています。

~師匠でもあるアルベルト・プーチは本当に厳しいのか~
彼は確かに厳しいですけど、言ってることは正しいのでイヤというわけにはいきませんね。また、一緒に走るライダーとパドックで会っても目を合わすなと言われます。それぐらいマジメと言うかストイックです。

~アプリリアと比較すると、開発の止まったRS250RWはかなり不利ではなかったのか~
確かにRS250RWの開発は止まっていましたが、バイクとしてのパッケージは既に完成されていました。逆にアプリリアは毎回のように新しいパーツを投入するので、短いセッションの間にそれらをセッティングしなくてはなりません。僕のバイクは足回りのセットアップだけで走ることができたので、それがアプリリアに対するアドバンテージになったと思います。また、コースによっては最高速で10キロぐらいアプリリアが速かったようですが、僕のマシンのアドバンテージは、タイヤの持ちがすごくいいこと。レース終盤になるとアプリリアのタイヤはタレてきちゃうのですが、僕はプッシュできました。そこは1年間を通して僕たちの強みでした。車体の特性とエンジンパワーの出方がタイヤに優しかったのでしょう。

~最終戦のコースアウトは緊張からきたものだったのか~
緊張や焦りというよりは、あのレースを勝ちにいったからです。11位でもチャンピオンが決定するレースでしたが、これまで9勝していたので10勝したいと思って…。リスクを負った走りをしていたら、コーナーへのアプローチでアプリリア勢に囲まれてしまい、行き場を失ってしまいました。僕の中では転倒するか、コースアウトするかの究極の選択でしたが、コースアウトを選びました。あとはどうやって転ばないようにするか、どうやってコースに復帰するかを考えていました。あのコースのグラベルは深く設定されているので、止まってしまうと出られなくなってしまいます。昔、モトクロスの東福寺(保雄)さんから「グラベルに入ったらアクセルを戻さないで開けていきなさい」と教わったのを思い出し、ニーグリップしてモトクロスのようにアクセルを開けて抜け出すことに成功しました。

~シモンチェリの転倒を見てどう思ったか~
コースアウトの後、11位というのを確認して数字的には大丈夫だったのですが、僕としては心配だったので順位を上げていくことにしました。そうしたら最後の最後でシモンチェリが転倒しているのを見て…。その時、「僕のチャンピオンが確定したんだな」と思いました。自分がコースアウトしたときは、神様から「そんなにチャンピオンは簡単に獲れないよ」と言われている気がしたのですが、逆にシモンチェリの転倒でチャンピオンが確定するなんて…。まさに天と地を見た一生忘れられないレースでした。

~来季のチームとMotoGPマシンについて~
MotoGPクラスのマシンは、ブレーキやタイヤのキャラクターがまったく違います。250ccと同じなのはタイヤが2つついていることぐらい。僕自身はまだちゃんと乗り切れていないのですが、例年の実績では250ccからステップアップしたライダーも高いパフォーマンスを見せています。なので、250ccと近い乗り方で走れるのかなと思っていますが、バイクのキャラクター自体はまったく違います。来年はインターベッテン・ホンダ・MotoGPというチームから走りますので、応援宜しくお願いします。

MotoGP250ccクラスは、今シーズンを最後に廃止となり、2010年シーズンからは新たに4ストローク600ccエンジンを搭載するMoto2クラスが新設される。よって青山選手は伝統ある250ccクラス最後のチャンピオンとして歴史に名を刻まれることになる。そして、来季はいよいよロードレースの世界最高峰MotoGPにステップアップする青山選手の更なる活躍が期待される。(バイクブロスXマガジンズ編集部 渡辺)

(バイクブロス・マガジンズ編集部)

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