写真/渡辺 昌彦 取材・文/佐川 健太郎 衣装協力/KUSHITANI
交差点は車やバイク、自転車や歩行者が入り乱れ、非常に危険な場所でもあります。事実、交通事故の約3割は交差点とその付近で発生しているというデータもあります。交差点を通過する際はスピードを抑えることはもちろん、何かあってもすぐに減速・停止できる準備をしておくことが事故防止への大事なポイントと言えるでしょう。
交差点におけるバイク事故で典型的なのが右直事故です。直進するバイクと右折する車が衝突するパターンが多く、大概は右折ドライバーによる直進バイクの見落としが原因であることが多いと言われています。交通事故の中でも非常に危険なパターンで、ライダーが重篤な怪我を負い死亡事故につながる割合が高くなります。ネット情報でも毎日のように悲惨な右直事故のニュースが飛び込んできます。こうした事故を防ぐためには、本来であれば信号機で直進と右折の流れを完全に分離すべきでしょう。あるいは欧州のラウンドアバウト(環状交差点)のように交差点の構造そのものを作り変えるか、またASV(先進安全自動車)に搭載される「衝突被害軽減ブレーキ」などテクノロジーのさらなる進化にも期待したいところです。ただ、それでも交通事故をゼロにすることは難しいと思いますが、自分や他者が犠牲にならないためにはどうすべきかを常に自問自答すべきです。
右直事故に関して言えば、自分だけ気を付けていても不十分です。相手がいることなので、最初にやるべきは相手のドライバーの意思を確認することです。たとえば自分が直進している場合、右折待ちのドライバーがこちらに気付いていないと思ったら、迷わずブレーキをかけて減速します。さらにそれでもドライバーが気付いていないようなら、止まってしまうぐらいにスピードを落とす。「右折車がいたら来る」と思っておく。それぐらいの周到さが必要と思います。
そこで大事なのは「自分の存在をアピールする」こと。自分を積極的に相手に見せることで、直進バイクが迫っていることをリアルに認識してもらうためです。特に危険なのは大型車の後ろに隠れてしまって右折車から見えないパターン。対策として自分は「前走車から離れたセンターライン寄り」の位置取りを意識しています。そうすることで右折車から早い段階で気付いてもらえることが多いです。逆に悪い例としては前走車の真後ろ、あるいは最悪なのは左後ろに隠れてしまうパターン。これだと右折車からは対角線上になるので前走車が邪魔になって全く見えなくなります。自分の存在をアピールする工夫としては反射材付きの目立つ色のウエアを身に付けるとか、奥の手としては一瞬ハイビームに切り替えて相手の注意喚起を促すといった方法も有りかと思います。詳しくは下記の解説をご覧ください。動画も合わせてチェックしていただくと動きのイメージが分かりやすいと思います。
■まずはアイコンタクト
最近は信号待ちでスマホを見ているドライバーも多い。注意力散漫なまま右折を開始して事故になるケースが後を絶たない。まずは相手のドライバーがこちらの存在に気付いているか、しっかり相手の顔を見てアイコンタクトする周到さが欲しい。交差点ではアクセルを戻し前後ブレーキを用意しつつ速度を抑えて慎重に通過すべきだ。
■相手から見えるポジションにつく
対向車線に右折待ちの車がいた場合。前走車の陰に入らないよう車間距離を十分とるとともに、自分の車線の右側寄り(片側1車線道路なら若干センターライン寄り)にポジショニングすると良い。相手に対して直進バイクが来ていることを積極的にアピールするためだ。写真を見てのとおり確実に「自分を見せる」ことができる。
写真は右折車のドライバーから見たイメージだが、直進してくる車の陰に入ったバイクはほとんど見えない。大型車の後ろなどはまったく見えていないと思うべき。「風よけ」代わりに前走車の真後ろにぴったりついたり、左後方にいると完全な死角になり見落とされる確率が高い。上の写真と比べてみれば一目瞭然だと思う。
■渋滞の切れ目は右折車がくる
もうひとつ右直事故の典型的なパターンとしては「サンキュー事故」がある。朝夕の通勤ラッシュ時などに右折待ちをしていると、対向車が「どうぞ」と道を譲ってくれる場合がある。そこで焦って曲がろうとアクセルを踏んだ瞬間、渋滞をすり抜けてきたバイクやスクーターと衝突。ライダーの立場から言えば、こちらが優先なのにと思うだろうが痛い目に合うのは自分。すり抜けをしないことが大前提だが、そうせざるを得ない場合があっても「渋滞の切れ目を見たら右折車が来る」と覚えておいてほしい。