写真/渡辺 昌彦 取材・文/佐川 健太郎 衣装協力/KUSHITANI
今回のテーマはクラッチの操作方法です。ツーリング中に渋滞で半クラを使いすぎて、あるいは信号でのストップ&ゴーで何回もクラッチを切ったり離したりして手首が辛い。腱鞘炎になりそうだという話をよく耳にします。自分もそうなるという人は、もしかしたらクラッチ操作方法が間違っているかもしれません。
最初にクラッチの仕組みについて少し触れておきます。クラッチとは動力伝達装置のことで、簡単に言うとエンジンで発生した動力をトランスミッション(変速機)に伝えたり遮断したりする役割を担っています。バイクのクラッチは通常何枚かのプレートが重なり合う構造になっていて、クラッチレバーを引くことでプレート同士が離されて動力が遮断される仕組みになっています。プレート同士はバネの力で圧着されていて、レバーを引くほどにバネの反力は強まります。つまり、握り込むほど強い力が必要なので、何度も繰り返すと手首が痛くなるわけです。特に大型バイクは大パワーでもクラッチが滑らないようバネの力も強く設定され、レバー操作にも強い力が必要になります。最近ではアシスト&スリッパークラッチも普及して軽いクラッチも出ていますが基本構造は同じです。
そこで疲れずに効率的にクラッチレバーを操作するコツが「握らずに引く」ことです。クラッチレバーの可動範囲として、まず無負荷の遊びの部分が少しあり、さらに半クラのゾーンが数センチほどあり、それ以降は完全にクラッチが切れた状態になります。つまりクラッチレバーは半分ほど引けば十分なのです。それを毎回、最後まで握り込もうとするから左手が疲れてしまうわけです。実際に発進時などにクラッチレバーの位置とバイクが動き出すタイミングを観察してみると、どこまでが全切りで、どこから半クラが始まるのかよく分かると思います。ということで、クラッチレバーはがっちり「握る」というよりは軽く「引く」感じの意識を持つと良いでしょう。
正しく操作するためにはクラッチレバーの位置も大事です。自分が扱いやすいようにレバーまでの距離や高さをシビアに調整したいところです。またスムーズなシフトチェンジのためにはペダルの位置も大事です。詳しくは下記の解説をご覧ください。動画も合わせてチェックしていただくと動きのイメージが分かりやすいと思います。
■半クラを出しやすい位置に合わせる
正しいクラッチ操作をするためには、まずクラッチレバーの位置調整が大事だ。レバーまでの距離が遠すぎると操作しづらく、近すぎると切りづらい。半クラを出しやすい位置に調整するのがベストで、目安としては第一・第二関節で作るアーチの中にレバーが収まる位置が力を入れやすい。また、レバーの高さに関しては肩から肘、手首、指先まで真っすぐ伸ばしたときにその延長線上にレバーがくるように調整すると手首の負担が少なくスムーズだ。
■走行中は2本、停止・発進は4本で
クラッチレバーの指使いについての正解はなく、自分がやりやすい方法であれば良い。レバーにかける指は何本でもいいが、自分の場合、走行中はギアチェンジで軽く引いたり、極低速で半クラを使う程度なので2本がけ(人差し指、中指)が多い。発進・停止などでクラッチをしっかり切りたいときは4本というように使い分けている。ちなみにオフロード走行などでは瞬間的に半クラを使いたい場合に備えてレバーには常に1本指をかけておく。
■レバーは半分引くだけで良い
クラッチレバーを引き込んでみると、思っていた以上にストロークがあることに気づくはず。最初に「遊び」が10mm程度(油圧クラッチは少な目)あり、次に「半クラ」のゾーンが20mmほどあり、それ以降は完全に切れた状態が30mm以上はあるはずだ。既にクラッチが切れているのに最後までレバーを引き込んでも意味がなく、深く握るほどにクラッチスプリングの反力はかえって強まるため手首が疲れるだけだ。つまり、クラッチは半分引けば十分なのである。
■ペダル踏み込み時に足首直角がベスト
ギアチェンジでひとつ大事なのがチェンジペダルの位置。ペダルを踏み込んだときに足首が直角になる位置に調整してみてほしい。ちなみにペダルの位置が高すぎるとシフトアップしづらく、低すぎてもシフトダウンしづらく、結果ギア抜けなどのシフトミスの原因にもなる。また、操作するときもガーンと蹴り込むのではなく優しく操作してやる。特にシフトアップ時はブーツのシフトパッドにペダルを当てて丁寧に送り込んでやる感覚が大事。