NSR250Rはプラスチックが多用されています。バイクの素材としてのプラスチックには、私は複雑な気持ちを持っています。
というのも、バイクの魅力って金属なんじゃないかと思うからです。
これは私の持論ですが、男子はみんな金属ボルトが好きなんだと思います。金属と金属がピッタリと合体する感触が。
なのにNSRは、金属をプラスチック製のカウリングで隠しているわけです。
ご覧のとおり、NSRはタイヤとタンク以外はほぼすべてプラスチックで包まれています。
NSRで最も大きいプラスチックはフロントカウルで3つに分解できます。
これがカウリングの最上部で、ヘッドライトとウインカーがついています。
そしてこれがカウリングの中部です。エンジンの熱を逃がすスリットが空いています。
そしてこれがカウリングの下部です。
この上部、中部、下部は、驚くほど見事にピッタリくっつきます。私のNSRはつくられてから約30年が経過していますが、それでもプラスチックに伸び縮みが発生していません。
「そんなことは日本製なんだから当たり前だ」と思わないでください。
カウリングの下部を今一度みてください。
カウリングはバイクの前面と側面を覆っているだけなのですが、ホンダはNSRのカウリングにこんな複雑な形を与えているのです。
あれ? 私、プラスチック部品を褒めてしまっていますね。
違うんです。きょうは「プラスチックより金属のほうが魅力的だ」という話をしたいのです。
NSRについて語り始めると、どうしても感心のほうが前に出てきてしまいます。
さて、NSRはカウリングのせいで、エンジンに刻まれた「HONDA RACING」の刻印をみせることができません。この刻印はHRCと共同開発した証で、とても重要です。
それで私はたまに、カウリングの中部と下部を外して走ることがあります。
みてください、エンジンとチャンバーが織りなすこの複雑な形。
この感じ、何かに似ているかと思ったら、SFマンガの金字塔「アキラ」に出てきた巨大冷蔵庫にそっくりです。
パイプがムニュムニュしている工業製品って生物的かつ有機的ですよね。NSRはそれを隠してしまっているのです。もったいない。