パイクスピーク・4,300mの頂上を目指す5組の日本人たち(1)

掲載日: 2014年05月27日(火) 更新日: 2014年06月03日(火)
この記事は2014年5月27日当時の情報に基づいて制作されています。

取材・写真・文 = 山下 剛

Pikes Peak International Hill Climb 2014
4,300mの頂上を目指す5組の日本人たち

アメリカ・コロラド州で開催される登山レース「パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム」は、2012年にコースが全面舗装化となり、様相が一変した。2013年は二輪クラスに2組の日本人が参戦して話題となったが、今年はさらに3組が増え、あわせて5組がエントリーしている。

彼らは、なぜわざわざ海外のレースに参戦するのか。どうしてパイクスピークに挑むのか。6月29日に行われる決勝レースまでの間、彼らのプロフィールを紹介するとともに、パイクスピークにかける彼らの意気込みを紹介しよう。

■第1回 高野昌浩さん
「無事に帰ることを目標に、アメリカのレースを楽しみたい」

マシン/Kawasaki Z1
参戦クラス/Pikes Peak Challenge- UTV/Exhibition

高野昌浩さんは、2013年10月にアメリカ・フロリダ州のデイトナ・インターナショナル・スピードウェイで開催されたAHRMAに参戦。ブルーサンダースの岩野慶之さんがチューンナップしたZ1で走り、見事3位表彰台を獲得したキャリアを持つ。

「日本のレースとは何もかもが違っていたし、雰囲気も楽しかったですね。コースの一部はオーバルを使ってるのでバンクがきつくて、“ここを走るのか!”っていう衝撃もありましたし(笑)」

初めての海外レース。慣れない環境、わからない言葉、未知のサーキット。そんな逆境をものともせず、高野さんは3位入賞という大活躍を見せた。雰囲気に飲まれそうになる場面もあったというが、全身全霊でそれらをはねのけて結果を出した。とてもいい経験だったし満足しているが、もやもやした何かが残っていることも事実だという。

「いちばん初めのチャレンジに参加したかった。楽しさと感動をしっかりと味わいたいんです」

ブルーサンダースは’08年、’09年にデイトナ、’11年には最高速チャレンジである「エルミラージュドライレイク最高速トライアル」と、アメリカのレースを数度経験している。彼らからアメリカのレースのおもしろさを聞かされ、楽しさを説かれ、そしてデイトナに行ってみると果たしてそのとおりだった。初めてここへ来た気がしなかったのだという。

「岩野さんたちが今度はパイクスピークに行くと聞いて、行きたいと思った。みんな初めてのレースだから、チームみんなで手探りしていくおもしろさも味わえるし、何よりも楽しそうでした。でも迷いもありましたね。みんなが未知のレースに参戦して足手まといにはなりたくないし、なんといってもコースはヤバそうだし(笑)」

しかし好奇心が勝った。高野さんは意を決してパイクスピーク参戦を表明したのだ。

「目標は無事に帰国すること。タイムは新井さん(新井泰緒=やはりブルーサンダースからパイクスピークに挑戦するライダーで、高野さんと共にデイトナを走った仲間)に任せます」

高野さんは謙虚にそう語る。20代の頃、カートでレースを経験していたが、バイクでは’08年にVFR750Fで出場した「テイスト・オブ・ツクバ」が初レース。以来、毎回出場してテイストの上位常連ライダーとなるが、高野さんは「今でも気持ちはツーリングライダー」とも話す。

「高野さんも新井さんもそうですし、うちで走ってるライダーはみんな選手権あがりとかではなく、一般のライダーです。でもポテンシャルはすごく高いし、レースを真剣に楽しむことにかけては誰にも負けない心意気を持った一流ライダーだと思っています。僕らメカニックも初めてのレースでは戸惑うことが多くて、そんな環境だからこそいろいろと考えるし、身につくことも多い。予測不可能な状況でもライダーが安心して走れて、ベストな結果を出せること。そのために全力を尽くすのが僕らの仕事です。海外レースはピュアにそれを経験できることがおもしろいですね」

ブルーサンダースの岩野さんは、パイクスピークをはじめとする海外レース参戦の首謀者でもある。ライダーだけじゃなく、メカニック自らが興味と好奇心、そして挑戦心をもって海外レースに参戦できる体制、それがブルーサンダースの強みだ。

「パイクスピークはすべてが楽しみですね。日本では経験できないことを経験できることの価値は計り知れないですし、それを実現できる環境にいられることは幸せだと思ってます」

4300mの頂上を見据えつつ、高野さんはあくまで謙虚にそう話す。パイクスピークを目の前にして高野さんが何を感じたか、また機会を作って話を聞いてみたい。

「目標は無事に帰ってくること。パイクスピークのすべてを楽しみたい」と話す高野さん。

高野さんとZ1。テイスト・オブ・ツクバ、デイトナAHRMAを走ってきた歴戦のマシンだ。保安部品をつければ公道走行可能な仕様としてあり、アメリカでのナンバーも取得済み。レース後はツーリングも楽しみたいと話す。

高野さんのZ1は5月13日にコンテナ詰めされ、今はアメリカ・ロサンゼルスに向けて渡航中。ロスからデンバーまでは鉄道輸送されるそうだ。写真は前回のデイトナ遠征時のラベルが貼ったままだったため「このままじゃデイトナ行っちゃうよ!」と剥がしている場面。

ブルー、ライムグリーン、ホワイトの3色に塗り分けられたタンク。デイトナ参戦の証、AHRMAのステッカーがひときわ目を引く。「CHAKA」は高野さんの愛称だ。

エンジンはクランクをMK2、バルブをメガサイクル製と換装しつつ1166ccまで排気量をアップ。ピストンはブルーサンダースオリジナルだ。


キャブはFCRΦ37をセット。高地の低酸素への順応については現地入りしてからさらにセッティングを詰めていく予定だ。


フロントフォークはH-D XL1200用フルアジャスタブルを装着。リアサスはオーリンズに換装している。ブレーキは前後ともにキャリパーをAPレーシング、マスターシリンダーはブレンボ製ラジポン、ローターはサンスター製。

(バイクブロス・マガジンズ編集部)

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