パイクスピーク・ヒルクライムに挑むサムライたち/伊丹孝裕(3)

掲載日: 2013年05月29日(水) 更新日: 2014年08月19日(火)
この記事は2013年5月29日当時の情報に基づいて制作されています。

取材・写真・文=山下剛

アメリカ・コロラドで開催される「パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム」は、1916年にはじまった歴史ある公道レースで、標高2800m地点をスタートし、4300mの頂上を目指す。ガードレールがない区間も多く、ひとつ間違えれば崖下に真っ逆さま・・・という過酷なレースに今年、2人のサムライが挑む。

トライアンフ横浜北のスタッフと伊丹さん、そしてスピードトリプルR。那波社長(右から2人目)と坂上工場長(左から2人目)の2人がメカニックとして現地入りし、伊丹さんをサポートする。

パイクスピーク・ヒルクライムに挑むサムライたち
~ライダー・伊丹孝裕(3)~

マシンを船積みするための梱包作業中、現地での動きなどについて打ち合わせをする渡辺正人さん(左)と伊丹さん(右)。情報が足りない状況でのレースだけに、二人の連携は重要だ。

パイクスピークの目標、そしてこれから

参戦するだけがレースじゃない。出るからには勝ちを目指す。スピードトリプルRを選んだのは勝つためだ。

「もちろんライバルはドゥカティ・ムルティストラーダですね」

ここ数年のパイクスピークで常勝しているのがムルティストラーダで、いわば独壇場ともいえる。それをライバルと想定するからには、もちろん目標はひとつだ。

「クラス優勝が目標です。でもそれだけじゃダメだと思ってるんです。昨年のリザルトを見ると、2輪の1250クラスで優勝できればタイムはかなりいいところに行くはずで、2輪4輪を含めたオーバーオール(総合)でもけっこう上になれるんです」

クラスで健闘することも大切だが、レースの評価はオーバーオールの成績がモノを言う。

「総合10位以内。これが大きな目標です」

初挑戦するレースだから予断は許されない。しかしそう語る伊丹さんの笑顔には余裕がみられる。「やりたいことのために、やれるだけのことをやる。ダメだったら仕切りなおしてまた挑戦すればいい」という姿勢を感じる。まだ41歳と考えるか、もう41歳と考えるかによってその判断は変わってくると思うが、ある程度の経験を積み重ね、実績と自信を身につけた今だからこそ、新たなチャレンジに対して積極的な姿勢で臨めるのではないか。彼の態度からはそうしたメッセージが伝わってくる。

「マン島TTにも、もう一度出たいですね。前回は完走が目標だったから、次のチャンスはもっと上を目指したいし、そうできる自信もついてきてます」

前回の記事でもふれたように、伊丹さんには「世界へ挑戦する道がひとつじゃないことを示したい」という目標もある。国内で走るだけがレースではない。近年とくに野球やサッカーが示しているが、海外で実力を試す経験がアスリートを大きく成長させることは明らかだ。たとえ一介のプライベーターであっても、世界の舞台で実力を発揮できる機会を作れることを、身を持って伝えたい。それが伊丹さんの狙いでもある。

「先に話したとおり、パイクスピーク・ヒルクライムは全面舗装になったことでこれから変わっていくレースだし、注目したほうがいいレースだと思うんです。でもまだまだ日本ではレース自体の知名度も低いし、どんなレースなのかも知られてないから、そのスタイルやライディングなどを紹介したい。レース経験者であればそのハードルは高くないってことを感じてもらいたいですね。その布石、最初の一歩になれればいいなと思ってます」

前述したように、筆者も伊丹さんたちに同行して現地で密着取材をする予定だ。練習走行、予選・決勝レースはもちろん、彼らがどんなふうに海外のレースを戦っていくのか。レース以外の彼らの行動や表情も含めてをしっかりと伝えたい。

最後にあらためて記す。「パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム」は、アメリカ・コロラド州にて6月24日~30日の日程で開催される。決勝レースは30日。渡辺正人さん、伊丹孝裕さんの挑戦にぜひ注目してほしい。

梱包されたスピードトリプルR。この状態でコンテナに詰められて船で太平洋を渡った後、鉄道便でレース開催地のデンバーまで運ばれるそうだ。

●パイクスピーク・ヒルクライムに挑むサムライたち/伊丹孝裕(1)
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■関連リンク
Pikes Peak International Hill Climb
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●パイクスピーク・ヒルクライムに挑むサムライたち/渡辺正人(3)

(バイクブロス・マガジンズ編集部)

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