ついにここまで来た! MC用タイヤの最新テクノロジー

掲載日: 2010年03月09日(火) 更新日: 2013年12月11日(水)
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この記事は2010年3月9日当時の情報に基づいて制作されています。

バイクブロス×マガジンズ編集部 渡辺=文/写真

今月2日、筑波サーキットにて行われたダンロップの新作タイヤ「SPORTMAX α-12(以下、α-12)」のプレス発表/試走会に参加したので、今回はその注目ポイントについてお知らせしよう。

近年、MotoGPなどのレースシーンからフィードバックされた新たなタイヤテクノロジーと言えば、なんといっても「分割トレッド」技術だろう。皆さんご存知の通り、ラウンド形状を持つモーターサイクル用タイヤのトレッド(接地面)はセンター付近と両サイドではまったく異なる特性を要求されることが多い。単純に言ってしまえば、接地時間が長いセンター付近では耐摩耗性が、車体をリーンさせた時のみ接地する両サイドでは高いグリップ性能が重視される傾向にある。

そして従来は、1本のタイヤのトレッドは1種類のコンパウンド(ゴム)で作られていたため、どこかでその「折り合い」をつける必要があったのだが、タイヤのトレッド面を幾つかのゾーンに分割して、それぞれに最適なコンパウンドを使用する分割トレッド技術が確立してからはその必要も無くなったというわけだ。特にオンロードモデルにおけるその威力は計り知れない。分割トレッド技術が開発されてからというもの、レースシーンにおけるタイヤメーカーの勢力分布図がガラリと変わってしまったことからもそれは明らかだ。また、レースだけではなく先鋭化が進むスーパースポーツモデルや、大パワーを発揮するスポーツ・ツーリングモデルに乗る我々一般ユーザーにとってもその影響は極めて大きい。この技術を用いれば、いかなるモデルや用途にもきめ細かく対応したタイヤが製造可能となるからだ。

さて、今回発表されたダンロップのα-12。そのどこが凄いのかと言うと、なんと大パワーモデル向けのZRサイズのリアタイヤはトレッド面を7分割し、それぞれに違う配合のコンパウンドを使用しているという点だ。これまではセンターと両サイドの3分割程度が主流で、多いものでも5分割程度だったが、最新のα-12では、それが一挙に7分割。しかも、センターと隣り合うゾーンには外側のグリップ重視ゾーンへの自然な「繋がり」を重視したシリカ系コンパウンドを、さらに、もっとも外側のショルダー部分には超強力なグリップを実現するカーボン系コンパウンドをわざわざ配合するという念の入れようだ。結果としてα-12は、良好なハンドリングとグリップ、ロングライフ、そしてウエット性能をも実現しているという。ダンロップではこの7分割トレッド技術のことを「マルチプルトレッド MT7」と呼んでいる。

そして、個人的にもっとも注目したのはα-12が「キャンバースラスト」も重視している点だ。キャンバースラストとは、円錐状の物体を転がすと自然に曲がる力のことであり、円錐の底面を2つ合わせたようなラウンド形状のトレッドを持つモーターサイクル用タイヤもこの力を利用してコーナーリングする。しかし、ラジアルタイヤが一般化してからというもの、どちらかというともうひとつの曲がる力「コーナーリングフォース」が重視される傾向にあったと感じている。でも、思い出してみて欲しい。細いバイアスタイヤを久々に味わうと、その自然で軽快、そして想像以上にタイトなコーナーリングにハッとすることがないだろうか。これは旧来のバイアスタイヤが構造的にキャンバースラストを活かしやすく、またそれを最大限に活かす設計となっていることがひとつの要因だと言われている。

モーターサイクルが車体を傾ける乗り物である限り、ラジアルであろうとバイアスであろうとキャンバースラストはタイヤが曲がるために絶対に必要な力なのだ。α-12では最新テクノロジーによって改めてキャンバースラストを解析、曲がるためのキャンバー角を最大20%もアップさせるとともにフロントとリアのキャンバー角とグリップ力の関係を最適化(C.C.T. キャンバースラスト・チューニング・テクノロジー)しているという。これにより、コーナーリング初期ではフロントから曲がるような最新のハンドリングを追求しつつ、コーナーリング末期ではリアに発生する強大なトラクションと旋回性をも実現しているのだ。最新タイヤというと、前述した7分割トレッドのような華やかなスペックに注力していると思いがちだが、既に研究し尽くされたと思っていたモーターサイクル用タイヤ本来の曲がる原理「キャンバースラスト」にも最新テクノロジーによる改良を施すという真摯な姿勢。これにはちょっと驚かされてしまった。

これからいよいよオンシーズン。「好み」が左右する部分が大きいので、「そろそろタイヤの交換を…」と考えているユーザーに何がなんでもα-12をオススメするというつもりは毛頭無いが、試走する機会も少ないモーターサイクル用タイヤのチョイスは難しいものだ。もし迷ったら、こうしたベーシックな面にも着目しながら、次期タイヤ候補を選んでみるというのも楽しいのではないだろうか。

●SPORTMAX α-12のインプレッションはコチラ

(バイクブロス・マガジンズ編集部)

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