山下剛 = 文
オートバイという機械の専門誌だけあって、このクラブマンもちょっと油断すると妙にカクカクして油くさ~い、温かみに欠けたものになってしまうものです。それはある意味で宿命的なものですが、だからといってそれでいいというわけでもありません。だから編集部はアレヤコレヤの工夫を凝らして、クラブマンを温かくしようとしているわけですが、そのなかでもふんわりとしたやわらかさと、ほっこりとした温かみを本に加えてくれているのが、コヨセ・ジュンジさんのイラストです。
クラブマン本誌では83ページ『クラブマンズストリート』の挿絵が、コヨセさんの筆によるものです。ちょっとページをめくってご覧になってください。いかがですか、やわらかな線のタッチで描かれた外国の町並み。見たことのない風景でもどこかで見たことがあるような、ちょっと懐かしい気持ちを感じさせてくれつつ、カフェから漂ってくるコーヒーの香りや走り去るスクーターの音も聞こえてきませんか?とてもフシギなのですが、コヨセさんの手にかかれば、無機質なものでもとたんにやわらかく温かいものになってしまうのです。
コヨセさんのそんな魅力がたっぷりとつまった絵本があります。『おたすけこびと』(徳間書店)は、こびとたちがトラックやクレーン車といった“はたらくクルマ”を使って、バースデーケーキを焼き上げるというファンタジー。ケーキと機械という組み合わせもちょっとフシギでおもしろいですが、見開きいっぱいに広がる世界には、隅々までたくさんのこびとがひしめき、はたらくクルマたちを楽しそうに操ってケーキを作っていく姿が描かれています。こびとたちはデフォルメされてかわいらしい姿ですが、クルマは精巧に描かれているギャップもおもしろいし、子供にとっては楽しみながら機械の仕組みやおもしろさを理解できる、というわけです。
きっと乗り物好き(=バイク好き)になるに違いないコヨセさんの絵本、今夜おやすみ前に読んであげてはいかが?
『おたすけこびと』(徳間書店)◎1575円
なかがわちひろ=文
コヨセ・ジュンジ=絵
コヨセ・ジュンジさんのイラストは、クラブマンでもおなじみ。これは『私的バイクライフ』のトビラ絵で、編集部のスタッフを描いてくれたものです。ちなみにコヨセさんもライダーで、愛車はヤマハSRX400なのです。