山下剛 = 文/写真 写真提供 = 株式会社キタコ(自動二輪車駐車システム)
前号の本誌で中島みなみ記者も指摘しているように、バイク駐車問題をもっとも早く解決する方法は、民間駐車場がバイクを受け入れることだ。だが、多くのライダーが体験しているように、都市部にある駐車場の多くはバイクを受け入れていない。
彼らがバイクを嫌うのは、「地震や通行人の接触などで転倒の危険性がある」「マフラーの熱でヤケドをする危険がある」といったところが主な理由だ。つまり、「バイクを受け入れるとトラブルの元になる」というのだ。
だが、これはただの言い逃れに過ぎないということを示す実例がある。東京・渋谷区にある笹塚NAビルは、地下駐車場にクルマとバイクが共存している数少ない駐車場だ。管理者である株式会社エヌエーシーシステムの北田正章さんは、「04年頃からバイクを受け入れはじめ、現在では40台分のバイク駐車スペースを整備していますが、転倒などによる事故は起きていません」と話すのである。
東京・渋谷区の笹塚NAビルでは、空きスペースを有効活用してバイク駐車スペースを確保している。こちらは軽自動車用スペースだったところをバイク用に転用した例。笹塚NAビルでは、通路の端やクルマ用駐車スペースの後ろなどを有効活用し、月極と時間貸しの形態でバイク用駐車場を運営している。狭いスペースには原付を、広いスペースには大型バイクをというように工夫している点と、余裕ある駐車スペース作りが無事故の理由だ。
ただし、こちらでは地上の公開空地にも現在は課金制のバイク駐車場を設置しているが、料金未払いも多いという。民間駐車場のバイク受け入れが進むには、バイクユーザーのマナー向上が求められているのも現実だ。
一方、バイク用パーツ開発をはじめ、盗難抑止製品を多く手がけてきた株式会社キタコでは、立体駐車場にバイクを駐車するための装置を開発、国土交通省都市・地域整備局街路課が行った「自動二輪車駐車システム共同技術開発」の公募を受け、参画している。これは震度7の地震でもバイクが倒れない安定性を持った装置で、なおかつほぼワンタッチでバイクを固定して駐車できるものだ。汎用性が高く、多くの立体駐車場への設置が可能で、この装置を利用すればバイクを停められる駐車場は飛躍的に増えることになる。
まるで出口のない迷路のようなバイク駐車問題にも、一筋の光明が見えはじめている。だが、私たちバイクユーザー一人ひとりがこの問題を受け止め、考え、行動することが大切なことには変わりない。解決の糸口は、まだまだ隠されているはずだ。
【1】これは立体駐車装置を撤去してできた空間を利用した例。万が一バイクが転倒しても隣接するクルマに接触しない、ゆとりあるスペース作りが無事故に貢献している。
【2】株式会社キタコが開発した立体駐車場用バイク駐車装置は、国交省が行った耐震試験で震度7相当でも転倒しない性能を確保。早ければ来春から都市部の立体駐車場に導入の見通しで、民間駐車場のバイク受け入れ促進が期待される。
【3】125cc以上のバイクが駐車可能で、立体駐車場の形態によってはこのように2台を並列して駐車できる。
【4】プロトタイプ製作後も開発は進められ、現在ではワンタッチでバイクを駐車できるまでに進化している。