高城一磨=文/永山育生&ドゥカティ=写真 取材協力=ドゥカティジャパン
残念ながら日本では開催されていないスーパーバイク世界選手権(以下SBK)だが、ヨーロッパを中心に海外での関心度は相変わらず高く、多くのファンを呼び寄せるレースイベントとして認知されている。今年はドゥカティが排気量を上げた1098Rを投入し注目されたが、一方でドゥカティ・ゼロックスのエースライダーであるトロイ・ベイリスが今シーズン限りで引退する意向を示し、昨年奪われたタイトルを奪還、有終の美を飾れるかも話題だった。
「ドゥカティに再びワールドタイトルを」表立った言葉にしなくても、今シーズンのベイリスの走りはその想いに溢れており、これまで要所で見せてきたアグレッシブさは、ワークスマシン1098R F08を何度も表彰台の頂点へ導く結果に繋がった。そして10/6に開催された第13戦フランス・マニクールでは、3位/優勝という成績で最終戦を待たずにタイトルを決定! ベイリスのレーシングキャリアに通算3回目となる栄光が刻まれた。
一方ライバルとして注目を浴びたヤマハの芳賀は、幾度か表彰台の頂点に登る活躍を見せたが序盤戦のノーポイントレースが響き、現在ランキング2位。マニクールでもレース1優勝、レース2で2位と好調振りを見せたが時既に遅く、昨年僅か数ポイントでホンダのトーズランドにシリーズタイトルを持っていかれた悔しさを、再び味わう結果となってしまった。
「プレッシャーとの闘いだった。とくにシーズン中盤を過ぎた辺りからタイトル獲得への可能性が高まり、我々のやってきたことに自信を持つとともに重圧も大きくなっていったんだ。でも、もう僕のところにきたタイトルは奪われる心配がないから、残りのレースは純粋に走りを楽しむことにするよ(笑)。2000年からラストとなる今シーズンまでに、ドゥカティは僕に素晴らしい経験をさせてくれた。3世代のスーパーバイクでそれぞれタイトルを獲得できたのだから、とてもハッピーだよ」
来シーズンのドゥカティには、ベイリスの代わりに芳賀が加わる予定だ。
【1】優勝ベイリス、2位芳賀、3位コルサー。レース2の表彰台は、来シーズンの動きで話題のライダーが揃った。ベイリスは残念ながら引退だが、芳賀はドゥカティに、コルサーは09より初参戦となるBMWに移籍が決定。先々にはアプリリアやKTMも参戦を目論んでいるから、SBKには今後も是非注目してみてほしい。ない。
【2】SBKで唯一の2気筒となる1098RF08は、ドゥカティが持つレーシングツインの伝統を再び世界に知らしめた。主催側のイコールコンディションを維持する意思から、最低重量の関係上バラストを装備するなど、表立たない部分で数々のレギュレーションに対応せざるを得なかった唯一の水冷ツイン。だが、結果は素晴らしいものになった。