写真/渡辺 昌彦 取材・文/佐川 健太郎 衣装協力/KUSHITANI
今回はアクセルワーク(スロットルワーク)について。バイクはスロットルをひと捻りするだけで、馬何十頭分のパワーが出てしまう乗り物です。安全で快適なライディングのためにも正確でスムーズなアクセルワークが大事です。
まずスロットルの握り方ですがポイントは2つ。ひとつ目は握る角度で、スロットルグリップに対して“斜めに優しく”握ること。ガチっと握るのではなく、軽くグリップに添える感じです。セルフチェックの方法としては、自分から見てグリップの根本の部分に適度なスペースが開いていることが目安(詳しくは下の写真)になります。
ふたつ目は指使いについて。グリップを握る4本指の中で特に意識したいのは「小指」と「薬指」で、主にその2本でスロットルを操作します。たとえばゴルフクラブを握ったり、剣道で竹刀を振るときも主に小指と薬指を使っているはずです。小指と薬指は握る力は弱くても繊細なコントロールが得意。2本の指でグリップを巻き取るように操作するイメージです。
一方、力の強い「中指」と「人差し指」はブレーキレバーを引く操作に適しています。つまり、操作によって得意な指を使い分けることで、よりハイクオリティな走りが可能になります。なお、ブレーキ操作に関しては「2.ブレーキング」の章を参照ください。
次にスロットルの操作方法ですが、スイッチのように単純なONとOFFでは上手く操ることはできません。コーナリングを例にとると、まず進入でスロットルを閉じて前下がりの姿勢を作り、バイクを倒し込んだらスロットルの遊びをとってバイクの向きが変わるのを一瞬待ち、コーナーの中盤から後半にかけてスロットルを徐々に開けて後輪にトラクションを与えつつ、加速しながら立ち上がっていくプロセスになります。
つまり、「スロットルを閉じる」→「遊びをとる」→「じわっと開ける」の3段階を滑らかにつなぐのがポイント。この「遊び」をとるワンクッションが大事で、スロットルオフからいきなりドカンと開けてしまうとドンツキやギクシャクが出てしまい、気持ち良く走ることができません。
また、スロットルを戻すときも丁寧な操作を心がけましょう。特に気温が低かったり雨天で滑りやすい路面でズバッと戻してしまうと、後輪がロックしたりホッピングして不安定になりがち。特に低いギアの場合は強いエンジンブレーキが作用してスリップしやすく、丁寧にスロットルを戻すことを心がけてください。詳しくは下記の解説をご覧ください。動画も合わせてチェックしていただくと動きのイメージが分かりやすいと思います。
■斜めに優しく添える
スロットルグリップに対して掌を斜めに当てて、優しく包み込むように指を添える。身近にある筒状のもので試してみてほしい。直角でなく「斜め」に握るのが自然でムリがないと分かるはずだ。自分から見てグリップのツバ部分と、人差し指と親指で作るループとの間に三日月形のスペースがあればオーケー(〇)。その隙間がないようだとガッチリと直角に握っている可能性が高い(✕)。力むほどに繊細なアクセル操作はできなくなる。
■小指と薬指で巻き取る
スロットル操作を主に担当するのは「小指」と「薬指」。繊細な操作ができるその2本でグリップを巻き取るように開けていく。手首とともに前腕を捻るような動きになることから、「ドアノブを回すように」とも表現される。一方の「中指」と「人差し指」は軽く添える程度で、個人的にはあえて宙ぶらりん状態でキープ。理由としては、咄嗟にブレーキ操作したいときに即レバーに指を伸ばせるようにしておくためだ。
■3段階で滑らかに
スロットルは3段階で丁寧かつ滑らかに操作したい。コーナーが近づいてきたらスロットルを閉じて減速(1)、バイクを倒し込んだらスロットルワイヤーの遊びをとって加速準備(2)、再び加速できるタイミングになったらスロットルを徐々に開けて立ち上がる(3)という手順。タイトコーナーでは(2)の区間は短く、緩く長いコーナーでは逆にスロットルを少しだけ開けて一定速度に保つパーシャル区間が長くなる。