9月の土曜日に、道東(北海道東部)にこれほどライダーがいないことは珍しいことです。路面が凍結して走れなくなるまでもう1カ月もないので、例年なら「走り溜め」するバイクであふれているはずです。
しかし私がツーリングに出た2018年9月8日(土)は、6日午前3時ごろ発生した「平成30年北海道胆振(いぶり)東部地震」からまだ2日しか経っていません。北海道初の震度7を記録し、約40名の死者を出しました。
ライダーたちが走りを自粛するのも、もっともです。
同じ北海道内でもここ道東は、震源地の胆振東部から250kmもあります。なので私が住む釧路(くしろ)市は、50時間の停電ぐらいで済みました。
だから街はすぐに日常に戻り、全然バイクで走ることができます。そこで道外ライダーに会って、北海道へのエールをもらおうと思い立ちました。
1時間くらい走ってもバイクはほとんど見つからず、釧路市湿原展望台の駐車場でようやく、道外ライダーに話を聞くことができました。
福岡ナンバーのカワサキ・バルカン900カスタムの竹本啓一さん(60歳)です。
「地震のときは道東の別海(べつかい)町のホテルにいました。ぐらぐらして目覚めたら、停電で電気がつかずあせりました」
竹本さんは不安を抱えながらも6日の朝、ツーリングの続行を決めました。今回は還暦記念の旅で、どうしても、いま日本人が行ける最東端の根室・納沙布岬に行きたかったのです。地震の影響で道東の奥地まで物資が届かず、ガソリンスタンドはどこも列をなしていて、1台10リッター限定のところばかりでした。
「走りを楽しんでいいか迷ったけど、『お金を落とす』ことでほんの少し貢献できるかなと。九州人としては、熊本地震で支援してもらった恩があります。北海道民には頑張ってほしい、としか言えません」
次に釧路市湿原展望台に入ってきたのは、ホンダCRF250ラリーを駆るイトウさん(32歳)でした。八王子からやってきました。
「地震のときは世界自然遺産の知床のキャンプ場にいて、全然気がつきませんでした。その日、羅臼(らうす)岳を7時間かけて日帰り登山して、下界に下りてきて初めて大変なことになっていると聞きました」
道東の道路でも、停電で信号機が消えていたり、トンネルの照明が点灯していなくて真っ暗だったりと、地震の爪痕を感じたイトウさん。
「北海道の皆さんには、復興していただくことを願うことくらいしかできませんが……。でも、よみがえった北海道に、必ずまた来ますよ」