道東(北海道の東部)にはすごい自然がたくさんありすぎて、こんなに立派な湖でも「二軍」扱いです。
この標茶(しべちゃ)町のシラルトロ湖は、私が住む釧路(くしろ)市から愛車のNSR250Rで30分の距離にあります。その駐車場に、ロスマンズカラーのホンダ・CRF1000Lアフリカツインが入ってきました。「あんな限定カラーあったっけ?」と思ったので近寄ってあいさつをしました。この日(2018年8月19日)、北海道に上陸したばかりの大園康志さん(52歳)は、「これカスタムペイントなんです」と教えてくれました。
大園さんは、以前はBMW・R1200GSアドベンチャーに乗っていました。そのR1200GSで初の北海道ツーリングをしたとき、山の中の砂利道で転倒し260kgの巨体を引き起こすのに苦労したそうです。
それで軽い、といっても230kgありますが、アフリカツインに買い替えました。
大園さんのアフリカツインのミッションはDCTで、要するにオートマです。大園さんはクラッチ付きの古めのバイク、BMW・R100GSを持っているので、ホンダの最新技術に接してみたかったそうです。
「定年退職後に田舎に引っ越そうかどうか、考えているんですよね」と大園さん。その候補地に、鹿児島県・屋久島と並んで、ここ道東も入っています。大園さんは鹿児島出身で、奥さんは関西出身です。北海道との縁は、旅行だけです。今回のツーリングは視察旅行でもあるのです。
大園さんは名古屋のCBCテレビのプロデューサーです。これまでドキュメント番組をつくってきました。
私は自宅に帰ってから「大園康志 CBC」でグーグル検索してみました。すると、大園さんたちは2017年に、引退した暴力団のその後の生活を描いた「ヤメ暴~漂流する暴力団離脱者たち~」で放送文化基金賞奨励賞を受賞していました。
そして2011年にはトヨタの4次下請けの仕事をする女性たちを追った「笑ってさよなら~四畳半下請け工場(こうば)の日々~」が、日本の民放としては初めて、モンテカルロ・テレビジョン・フェスティバルの最高賞「ゴールデンニンフ賞」を受賞していました。
大園さんは出会った日の夕方、私にメールを送ってくれました。
「アサオカさんに聞かれた『なぜ道東に来たのか』をあらためて考えると、私が52年生きて来た中で、極めてオリジナルがここにはあるからですかね。道、空気、食、何もかもです。五感が刺激されるというのでしょうか」
大園さんのようないわば「社会の目利き」にそこまで言わしめる道東ってすごいでしょ。