私は2018年7月中旬に1泊2日の日程で、本州などから道東に来くるバイカーたちに話を聞く取材旅行に出かけました。北海道の東の地域だから「道東」といいます。私も道東の釧路市というところに住んでいます。
道東は寂れた土地なのですが、毎年夏になると多くのバイカーがやってきます。ここに何があるというのでしょうか。
「わざわざ道東に来る理由? 確かに自然があふれる風景なら、信州にもあるよね。道東ならではの空気感としかいえないかな」
道東の魅力をそのように話してくれたのは、静岡県焼津市在住の松田さん(63歳)です。7月3日に北海道に入って、道東をぐるぐるまわって7月18日に、道東・弟子屈町の屈斜路湖畔にある和琴野営場に到着しました。相棒は、700㏄ビッグスクーター、インテグラです。
松田さんはこの3年ほど、年2回道東ツーリングをしています。本州も走り回っていて、今年5月には九州をじっくり回りました。
松田さんのバイク歴は、学生のころに少し乗って、30代でまた少し乗り、50歳ごろから現在までがっつり乗っている、といった感じです。
50代で大病に見舞われた松田さんは、「このままではバイク旅を続けることはできない」と考え、大好きな酒をやめて健康第一の生活に切り替えました。なので、キャンプ場のテントのなかでもノンアルコールビールです。
インテグラは5年前に買ってもう6万kmも走っています。63歳でそれだけ走り続けられるのは節制しているからだけではなく、無理をしていないからです。雨が降るとホテルに泊まって温泉につかることもあります。そもそもインテグラも、オートマだから買ったそうです。
和琴野営場は屈斜路湖畔にあるので、少し歩けばすぐに水の風景にたどり着きます。400円で入ることができる日帰り温泉も、徒歩2分の場所にあります。
優れたロケーションと温泉のセットは、ここ屈斜路湖に限らず、道東各地に点在しています。なのに本州の観光地ほど人が押し寄せません。松田さんのように、1人でゆっくり静かにじっくり旅を楽しみたい人には、道東はうってつけの場所といえるでしょう。