2017年にCBR250RRが出ました。私のような中免ライダーには久しぶりのビッグニュースでした。しかし散々悩んだ挙句、私はいま保有している89年製のNSR250Rを手放さないことにしました。
私のNSRは30年近く前のバイクで、毎年故障もします。一方のCBRは、カウルのデザインがイマ風ですし、倒立サスですし、速いという評判です。でも私の中では、CBRがNSRに負けたのです。
もし私になんの先入観もなく、「30年前のNSRと最近出たばかりのCBR、どちらか好きなほうを持って行ってもいいよ」と言われたら、多分CBRを持って行ったと思います。しかし私には「NSRの衝撃」という先入観があるので、どうしてもNSRを捨てきれないのです。
CBRに足りないものは、デザインでも性能でもなく、衝撃だと思います。例えば1980年にデビューしたRZ250は、「趣味の釣りなんてしてらんねえな、RZ買わなきゃ!」と思わせる力がありました。当時の若者は「バイクに乗りたい」と思ったのではなく、「RZに乗りたい!」と思ったのです。
ヤマハの開発陣はRZを「これが最後の2ストになるかもしれないから、徹底的にデザインとコストを追求しよう」という思いでつくったそうです。その背水の陣が、当時から古いと言われていた2ストエンジンを消滅の危機から救い、あの恐るべき2ストクォーターブームを築き上げたわけです。
さらにあと2台、衝撃のクォーターを紹介します。初代VT250Fと初代RG250ガンマです。
VTはおしゃれだしスマートだしスタイリッシュだし正統派です。250ccバイクという決して単価が高いわけではない製品に、天下のホンダがよくこれだけの英知を投入できたなと感心します。ガンマも同じです。開発陣の「いいから社内にあるすべての技術を持ってこい!」「販売価格が高くなる!? そんなの後から考えればいいんだよ!」という怒号が聞こえてきそうな意欲作です。
それからすると、2017年のCBR250RRには、残念ながら小遣いが少ない若者が「スマホを捨ててCBRに乗らなきゃ」と思わせる力がないように思います。ホンダ250㏄バイク史上最高の出来かもしれませんが、世の中の80万円の製品のなかで断トツの1位なわけではありません。
この年(48歳)になると、単においしくて栄養があるメニューではなく、シェフのこだわりが伝わってくる料理を食べたくなるわけなんですよね。