パイクスピーク・4,300mの頂上を目指す5組の日本人たち(3)

掲載日: 2014年06月10日(火) 更新日: 2014年06月11日(水)
この記事は 2014年6月10日に書かれたもので、内容が古い可能性があります。

取材・写真・文 = 山下 剛

Pikes Peak International Hill Climb 2014
4,300mの頂上を目指す5組の日本人たち

アメリカ・コロラド州で開催される登山レース「パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム」は、2012年にコースが全面舗装化となり、様相が一変した。2013年は二輪クラスに2組の日本人が参戦して話題となったが、今年はさらに3組が増え、あわせて5組がエントリーしている。

彼らは、なぜわざわざ海外のレースに参戦するのか。どうしてパイクスピークに挑むのか。6月29日に行われる決勝レースまでの間、彼らのプロフィールを紹介するとともに、パイクスピークにかける彼らの意気込みを紹介しよう。

■第3回 岸本ヨシヒロさん
「TT零は自分が作ったバイクだからこそ、自分で走らせたい」

マシン/TT零13改
参戦クラス/Electric- Electric Modified

岸本ヨシヒロさんは東日本選手権ST600チャンピオンを獲った後、2008年にニュージランドのワンヌガイで行われる公道レース「ロイヤル・ホールデン・メモリアルレース」を完走。2010年に再挑戦しF3クラスで5位入賞を果たした。2011年からはコンストラクターとして電動マシンを製作し、マン島TTに3年連続参戦して2度の入賞を果たしている。現在41歳の岸本さんだが、本格的なレース活動をはじめたのは30歳になってからという遅咲きライダーであり、現在は電動マシンのコンストラクター兼チーム監督としても活動する、異色の経歴を持ったライダーだ。

「パイクスピークのことは以前から興味を持っていましたけど、ダート区間があった頃は今の自分がチャレンジするレースではないと思っていたんです。ところがコースがすべて舗装化され、2013年パイクスピーク二輪クラスで優勝したのはライトニングという電動バイクでした。これには刺激を受けましたね」

昨年パイクスピークに挑戦した渡辺正人さんと伊丹孝裕さんとは、マン島TTのつながりもあり、彼らからも詳しい話を聞いた。

「非常にやり甲斐のあるレースだと思ったんです。マン島TTからパイクスピークに挑戦の舞台を移したのはそういう経緯ですね」

もうひとつ、松下ヨシナリさんが昨年のマン島TTで事故死してしまったことによる影響も大きかった。松下さんはチーム未来のライダーでもあったからだ。昨年は松下さんの親友でもあり、TT優勝経験もあるイアン・ロッカーさんが急遽代理となってTT零13を走らせたが、イアンさんはそのレースを最後に引退を表明した。マン島TTの電気バイククラスのライダーには、エンジンクラスでの完走経験が必須となるため、岸本さんが自ら走らせるというわけにもいかない。

「彼に代わるライダーを見つけられないという事情もありますし、やっぱり彼をマン島で失ってしまったというショックも大きくて……。もともとマン島TTへの挑戦は3年でひと区切りつけようと思っていたこともあって、海外レースへの挑戦そのものをやめようと考えたこともありました」

そんな岸本さんに風を吹き込んだのがパイクスピークだったのだ。

「マン島TTはコンストラクターとしての参戦でしたが、パイクスピークならライダーにもなれる。ここ数年はコンストラクターと監督に勤しんできましたが、そもそもはバイク乗りですからね、やっぱり自分で走りたいという気持ちはありますし、TT零は自分が作ったバイクだからこそ自分で走らせたいという思いもありました」

海外レースのキャリアのスタートとなった08年のニュージーランドのときから、岸本さんは「型にはまらず、バイクの楽しみ方を見つける」ことをスタイルとしてきた。パイクスピークへの挑戦もその文脈から外れていない。海外の公道レース、コンストラクト、そして今回はライダーとしてパイクスピークを走る。この数年、岸本さんが積み重ねてきたバイクでのチャレンジの集大成ともいえるだろう。

「モーターやフレームは昨年から継続してますが、内部を見直して改良した“TT零13改”が今年のマシンです。初めてのコースだからデータは何もなく、だから目標タイムも今は決めてません。まずは完走することが目標です」

改良版とはいえマシンはすべてバラしたうえで、バッテリー搭載位置やライディングポジションなどを登山レースであるパイクスピークに合わせたディメンションとしている。勾配に合わせたマシンセッティングについては富士山周辺で行い(TT零13改はナンバー取得済み)、モーター出力や二次減速比を現地での実走でさらに詰めていくという。

マシンは今年もグッドスマイルレーシングとのコラボレーションとなり、フェアリングには初音ミクのレーシングバージョンである「レーシングミク」が描かれる。ゼッケンはミクと語呂合わせとなる「#39」だ。アメリカのファンたちに、初音ミクというモダンな日本文化がどう映るのかにも注目が集まるところだ。

「TT零13改のシェイクダウンは先日、西浦サーキットで行いました。仕上がりは上々です。日本でやれることは全部やって、マシンをアメリカへ向けて送り出しました。あとは現地でどれだけセッティングを詰めていけるか、コースに馴染めるかですね」

岸本さんは6月11日に現地入りし、高地トレーニングも兼ねて準備を進める。決勝までにどれだけTT零13改のポテンシャルを引き出せるか。コンストラクター、チーム監督、ライダーとしてマルチにバイクを楽しむ岸本さんに期待したい。

岸本さんは2011年から2013年までの3年間、マン島TTに挑戦。11年は5位完走、13年は6位完走という結果を残している。

5月4日、西浦サーキットにてTT零13改をシェイクダウン。ライド前の真剣なまなざし。

TT零13改は、ヒルクライムに備えてディメンションやバッテリーレイアウトを見直し、モーター出力もそれに合わせた設定とした。

チーム未来のメンバー。左からZEEZOON田中さん、MIRAI学生ヘルパー中野雄大さん、カーボンパーツのZEEZOON青島さん、MIRAI広報なべみさん、岸本さん、アッコさん(MIRAIメカニック)、DP3南さん(メーターとデータロガーのプログラム)

初音ミクが描かれたTT零13改は、すでにアメリカに向けて名古屋港から船便にて送られている。「萌え文化」はアメリカ人にどう映るのか!?

~Pikes Peak International Hill Climb 2014 関連レポート~

■第1回 高野昌浩さん「無事に帰ることを目標に、アメリカのレースを楽しみたい」

■第2回 新井泰緒さん「パイクスピークに行くと決まってから夢が広がった」

(バイクブロス・マガジンズ編集部)

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