ヤマハは MotoGP オフィシャルライダーとして、ジャック・ミラー選手と2026年シーズンの契約を更新した。これにより「Prima Pramac Yamaha MotoGP」は来季、ミラー選手とトプラック・ラズガットリオグル選手の2名体制で参戦する。なお、これに伴ってミゲール・オリベイラ選手がチームを離れることとなった。
ヤマハ発動機株式会社は、当社MotoGP オフィシャルライダーとしてジャック・ミラー選手と2026 年シーズンの契約を更新しました。これにより、「Prima Pramac Yamaha MotoGP」の来シーズンのラインアップが決定。ミラー選手と、スーパーバイク世界選手権(WorldSBK)で2 回のチャンピオンを獲得しているトプラック・ラズガットリオグル選手という布陣で参戦します。
今年、2018-2020 年シーズンに続き、Pramac Racing に復帰したミラー選手は、ヤマハライダーとしてのデビューイヤーで「YZR-M1」の開発に貢献しながら、アメリカズGP で5 位などの成績を収めています。サマーブレイク中には、当社のファクトリーチームである「YAMAHA RACING TEAM」から、鈴鹿8 時間耐久ロードレース第46 回大会に出場して2 位獲得に大きく貢献しました。
今回の契約締結により「Prima Pramac Yamaha MotoGP」は来季のラインアップを確定。ミラー選手は、WorldSBK で2 回のチャンピオンを経験し、現在もWorldSBK でランキングトップにつけるラズガットリオグル選手と2026 年シーズンを戦うことになります。
これに伴い、ミゲール・オリベイラ選手が「Prima Pramac Yamaha MotoGP」を離れることになります。オリベイラ選手はアルゼンチンGP での負傷により4 大会を欠場しましたが、「Prima Pramac Yamaha MotoGP」の重要なデビューイヤーに、その一員として高いプロ意識と強いチャレンジスピリットを発揮し「YZR-M1」の開発に精力的に取り組んでくれました。当社はオリベイラ選手の貢献に心から感謝し、今後の挑戦における幸運と成功を祈ります。
「ヤマハ、Prima Pramac Yamaha MotoGP に留まることができて本当に嬉しく、ワクワクしています。今年はPramac Racing に復帰することができました。これからもヤマハとバイクの開発に尽力し、ライバルとの差を縮めていくことを楽しみにしています。ベストを迎えるのはまだこれからだと信じています。
そして何よりも、ヤマハ、Pramac Racing、そして私のプロジェクトへの貢献を常に信頼してくれる二人のパオロ、パヴェジオとカンピノーティに心から感謝します」
「ジャックがPrima Pramac Yamaha MotoGP で活動を継続することを正式に発表できることを嬉しく思います。ジャックは、大きなエネルギー、豊富な経験、そしてさまざまなマシンへの適応力を持っているライダーで、即座に私たちのプロジェクトにフィットし、チームにとってかけがえのない存在となりました。
急速な進化と革新が必要な今シーズン、ジャックの前向きな姿勢、積極的な思考、常にチームを鼓舞する存在感は、ヤマハとPramac Racing にとって大きな推進力です。さらにこの1 年間で積み上げた経験は、2026 年シーズンに向けて大きな強みになるでしょう。
同時に、この発表には複雑な感情が伴います。ミゲールがチームを去ることを意味するからです。残念ながら、アルゼンチンGP での負傷が彼のシーズンに影響を及ぼしましたが、復帰への強い意志、プロジェクトへの献身、そしてプロ意識は模範的なものでした。私たちは残りのレースをともに戦うことを楽しみにしており、シーズン終了まで彼を全力でサポートします」
「私がジャックに深い愛情を抱いていることは周知の事実です。彼はPramac Racing でキャリアの重要な段階を過ごしたライダーであり、今シーズンの復帰はチーム全員に大きな喜びをもたらしました。人間的な側面を超えて、ジャックの貢献はYZR-M1 の開発においてヤマハを支える上で極めて重要でした。そんなジャックが2026 年シーズン、Prima Pramac Yamaha MotoGP のライダーに決定したことは、重要かつ貴重なことです。
チーム運営には時に困難な決断が伴います。この点において、ミゲールがチームに溶け込み、この数ヵ月間示してくれた献身とプロ意識を心から感謝します。彼とともに過ごせたことは喜びであり、優れたプロフェッショナルであると同時に素晴らしい人間性を備えていることを知ることができました」
「ジャックが来季も私たちとともに戦ってくれることを大変嬉しく思います。数ヵ月にわたる共同作業を通じ、私たちは互いをより深く理解し、彼の必要とするものを把握しました。今後もさらなる進歩を遂げられると確信しています。2 年間はすべての歯車を噛み合わせるのに最適な期間であり、私たちはすでに2026 年に向けたベストな準備を進めています。
同時に、ミゲールがシーズンを通して成し遂げた素晴らしい仕事に感謝します。シーズン序盤の負傷により、彼の持つ卓越した才能を発揮する機会が奪われてしまったのは心から残念に思います。しかし、私たちが継続している開発作業により、シーズン終盤では彼の真の価値を反映した結果を残してくれることを願っています」
ミラー選手はダート・レーシングからキャリアをスタートし、2009 年にロードレースに転向。IDM125(Internationale Deutsche Motorradmeisterschaft)でチャンピオンを獲得したあとロードレース世界選手権のGP125 にデビューし、フル参戦を開始しました。
2013 年には「Racing Team Germany」からMoto3に出場しトップ争いの常連として注目を集め、翌2014 年は「Red Bull KTM Ajo」から出場してチャンピオン争いを繰り広げ、最終戦でアレックス・マルケス選手に僅差で敗れランキング2 位。そして2015 年には「LCR Honda team」に移籍し、Moto3 から直接、MotoGP にステップアップしました。
ルーキー・シーズンこそ苦戦したものの、2016 年に「Marc VDS Honda」に移籍。シーズン開幕時に足を骨折していたにもかかわらず、激しい雨の中で行われたオランダGP で初優勝するなど何度もトップ10 に入る活躍が評価され、2017 年も同チームで契約を継続。ここでもまた印象的な走りで注目を集めたミラー選手は2018 年にPramac Racing に移籍し、マシンをホンダからドゥカティに乗り替えました。
この年、ミラー選手はアルゼンチンGP でポールポジションを獲得するなど素晴らしいシーズンを経験して成長し、より一層競争力を高め、同チーム2 年目の2019 年は表彰台を5 回獲得、3 年目の2020年も4 回獲得と安定した強さを見せ、翌2021 年にはファクトリーチームへの移籍を果たしました。
ドゥカティ・ファクトリーとしての1 年目は、優勝2 回を含め表彰台を計5 回獲得し、ランキング4 位と過去最高のシーズンを送りました。2022 年は日本GP で優勝を果たしたほか、7 回の表彰台獲得という活躍を見せ、チームメイトのF・バニャイア選手の初タイトル獲得を後押ししながら、自身も合計189 ポイントを手中にして、ランキング5 位という好成績を残したのです。
ドゥカティで5 シーズンを過ごしたミラー選手は、2023 年にKTM へ移籍。同年はスペインGP でスプリントと決勝の両レースでいずれも3 位表彰台、ドイツGP でもスプリントで3 位という活躍を見せたものの、ランキングは11 位に後退。続く2024 年はランキング14 位にとどまりました。
そして、「故郷の空気に勝るものはない」という言葉通り、ミラー選手は今シーズン、パオロ・カンピノーティ氏のもとに戻り当社ファクトリーライダーの一員として「Prima Pramac Yamaha MotoGP」に復帰。ここまで22 戦中14 戦を終え、アメリカズGP での5 位を最高に、ランキング17 位につけています。また鈴鹿8 時間耐久ロードレース第46 回大会では当社ファクトリーチームの一員として出場し、2 位でフィニッシュしました。
【プロフィール】
・生年月日/1995 年1 月18 日
・出身地/オーストラリア・クイーンズランド州タウンズビル
・国籍/オーストラリア
・Instagram/@jackmilleraus
・身長/173cm
・体重/64kg
【ハイライト】
・GP デビュー/2011 年/ドイツGP (GP125)
・GP 初優勝/2014 年/カタールGP(Moto3)
・MotoGP デビュー/2015 年/カタールGP
・MotoGP 初優勝/2016 年/オランダGP
・GP 優勝回数/10 回(MotoGP/4 回、Moto3/6 回)
・GP 表彰台回数/33 回(MotoGP/23 回、Moto3/10 回)
・スプリント表彰台獲得数/2 回(2023 年/スペインGP、ドイツGP)
・ポールポジション獲得数/10 回(MotoGP/2 回、Moto3/8 回)
【主な戦績】
2025年/MotoGP 世界選手権 ランキング17 位 (52 ポイント ※) [Pramac Racing から参戦]
2024年/MotoGP 世界選手権 ランキング14 位 (87 ポイント)
2023年/MotoGP 世界選手権 ランキング11 位 (163 ポイント)
2022年/MotoGP 世界選手権 ランキング5 位 (189 ポイント)
2021年/MotoGP 世界選手権 ランキング4 位 (181 ポイント)
2020年/MotoGP 世界選手権 ランキング7 位 (132 ポイント) [Pramac Racing から参戦]
2019年/MotoGP 世界選手権 ランキング8 位 (165 ポイント) [Pramac Racing から参戦]
2018年/MotoGP 世界選手権 ランキング13 位 (91 ポイント) [Pramac Racing から参戦]
2017年/MotoGP 世界選手権 ランキング11 位 (82 ポイント)
2016年/MotoGP 世界選手権 ランキング18 位 (57 ポイント)
2015年/MotoGP 世界選手権 ランキング19 位 (17 ポイント)
2014年/Moto3 世界選手権 ランキング2 位 (276 ポイント)
2013年/Moto3 世界選手権 ランキング7 位 (110 ポイント)
2012年/Moto3 世界選手権 ランキング23 位 (17 ポイント)
2011年/GP125 世界選手権 ランキングNC (0 ポイント)
(※)第14 戦終了時点
ヤマハ発動機株式会社(2025年9月5日発行)
(バイクブロス・マガジンズ編集部)