バイクや自動車部品のメーカーとして知られるドイツのボッシュが、二輪車向け自動緊急通報システム「ヘルプコネクト」を開発したと発表した。このシステムは、バイクに搭載された慣性計測センサーユニットが衝突検出アルゴリズムにより事故を検知した場合、事故現場とライダーの情報をスマートフォンにインストールされたアプリからボッシュカーサービスステーションを経由し救急サービスに通信されるというもの。このシステムの導入により事故対応処理に要する時間を最大50%まで短縮することが出来るという。なお、このシステムはドイツをはじめとする欧州各国に向けサービスを開始する予定だが、現在のところ日本国内には導入されていない。
・ロバート・ボッシュ GmbH 取締役会メンバーのハラルド・クローガー:「ヘルプコネクトにより、ボッシュの二輪車向けセーフティシステムの幅広い製品ポートフォリオに、デジタル版の守護神が加わります」
・ネットワーク化:新たに開発したインテリジェントな衝突検出アルゴリズムにより、ボッシュの二輪車向けセンサー技術が事故を検知、スマートフォンアプリを介して救命活動を開始
・効果的:自動緊急通報システムにより、事故対応に要する時間を最大50%まで短縮することも可能に
交通事故は一刻を争います。二輪車ライダーは救助を早く受けられるほど、救命の可能性が高まります。日本において、二輪車ライダーが事故により死亡もしくは重傷となるリスクは自動車ドライバーの約10倍(※1)と、今なお高い状況にあります。このような背景から、ボッシュはライダーが迅速に救助を受けられるよう、二輪車向けの自動緊急通報システム「ヘルプコネクト」を開発しました。
「ヘルプコネクトによって、ボッシュの二輪車向けセーフティシステムの幅広い製品ポートフォリオに、デジタル版の守護神が加わります」と、ボッシュの取締役会メンバーであるハラルド・クローガーは述べています。
ヘルプコネクトは、車両に搭載された慣性計測センサーユニットに組み込まれたインテリジェントな衝突検出アルゴリズムにより事故を検知すると、スマートフォンアプリを介して事故現場とライダーに関する情報をボッシュカーサービスステーション経由で救急サービスに送信します。これにより、事故に遭遇したライダーの発見にかかる時間を短縮します。なお、このような自動通報システムにより、救急隊員が事故現場に到着するまでの時間は、最大で半分にまで短縮可能(※2)であると言われています。
ヘルプコネクトは、ボッシュのモーターサイクル用スタビリティコントロール(MSC)の主要構成コンポーネントである慣性計測センサーユニットからの情報を活用します。このセンサーは、加速度と角速度を毎秒100回測定し、車体角度や車体方向が変化する速度を把握します。こうしてセンサーは、二輪車の車体の向きとリーン角を正確に計算します。
さらに、センサーに組み込まれたアルゴリズムによって、二輪車が事故に巻き込まれたのか、または駐車中に車両が転倒しただけなのかを自動的に検出します。追加のコントロールユニットが不要なため、二輪車に簡単にヘルプコネクト機能を搭載することができます。ヘルプコネクトは、Bluetooth経由でボッシュの緊急通報用アプリ「Vivatar」に接続します。
なお、二輪車メーカーが提供する専用アプリなど、Vivatar 以外のスマートフォンアプリも、ヘルプコネクトと連携させることが可能です。ヘルプコネクトが提供するデータは位置情報にとどまりません。ライダーから提供された、救命活動において極めて重要な役割を担う可能性のある医療関連データも、ボッシュカーサービスステーションに送信します。また、要望に応じて、事故の発生を第三者に自動的に通知することも可能です。
自動緊急通報サービスはまず、ドイツのユーザー向けに提供が可能となる予定です。ボッシュカーサービスステーションとの連絡は、欧州各国(※3)からドイツ語または英語で行うことができます。事故が深刻でライダーからの応答がない場合には、救急隊が直ちに現場に向かいます。スマートフォンは一般的に身に付けていることが多いため、ライダーが事故による衝撃で二輪車から投げ出された場合であっても、迅速に発見することができます。
ボッシュのすべてのアシスタンスシステムと同様に、ヘルプコネクトはエンジニアと社内の事故調査部門による協働の成果です。「ライダーの安全性を向上する製品開発以前に、ライダーが直面する危機的状況を理解する必要があります」と、クローガーは述べています。
実際に発生した二輪車事故の過去データを把握することで、事故の研究者は安全性を向上させる技術革新のきっかけをつかむことができます。ボッシュは自動緊急通報システムの開発のための努力を惜しむことはありませんでした。特定の事故シナリオを分析し、ヘルプコネクトの機能性を実証するためだけに、18回もの衝突試験を実施しています。
ライダーの安全性の向上は、長年にわたりボッシュにとっての大きな懸案事項でした。グローバル規模で二輪車向けセーフティシステムを提供するリーディングサプライヤーであるボッシュは、25年前にモーターサイクル用ABSを、そして2013年にMSCを導入し、ライディングの安全性を大幅に向上させました。そして、アダプティブクルーズコントロール(ACC)、衝突予知警報、死角検知を含む、レーダーベースのアシスタンスシステムのアドバンストライダーアシスタンスシステム(ARAS)の導入により、ボッシュのセーフティシステムの製品ポートフォリオのさらなる充実化を図っています。
(※1)2017年の二輪車(排気量125cc以上)のデータから推計
・出典/2018年2月15日付警察庁交通局「平成29年中の交通事故の発生状況」
・一般社団法人自動車検査登録情報協会「自動車保有台数の推移」
(※2)出典/EUプロジェクト「Harmonised eCall European Deployment(I_HeERO)」
(※3)ドイツほか、オーストリア、ベルギー、フランス、イタリア、アイルランド、ルクセンブルク、オランダ、スペイン、スイス、英国。2020年6月現在、日本でのサービス展開はしていません。
ボッシュ株式会社(2020年6月4日発行)