2019年1月8日からアメリカ・ラスベガスで開催されている「CES2019(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)」。世界各国から4500社以上の企業が出展する世界最大の家電見本市だ。近年はAR(拡張現実)やAI(人工知能)に関する最新技術の展示が目立つこともあり、自動車メーカーが自動運転にまつわる最新テクノロジーをお披露目する場としても知られるようになった。そんなCESにBMWモトラッドがR1200GSをベースにした自動運転バイクを出展して話題になっている。
<写真>CESの会場でデモ走行を行う自動運転のR1200GS。
BMWが研究用に製作したR1200GSは、ライダーがいなくとも車両単独で走行できるバイクだ。このプロトタイプが発表されたのは2018年9月で、もちろんBMWモトラッドとしては初の自動運転バイクである。車体に搭載されたGPSや各種センサーと車体やエンジンを制御するユニットの組み合わせによって、加速、コーナーリング、減速、停止までをすべて自動で行うという、まさに最新テクノロジーの塊なのだ。
<写真>ハンドルに大きな舵角がつくような極低速のターンでも車体は安定。
自動運転技術はいま四輪の世界でもっとも注目を集めるテクノロジーで、既存の自動車メーカーからベンチャーまで世界中の企業が莫大な費用をつぎ込んで研究開発に励んでいる。四輪の自動運転と聞くと、ドライバーは何もせずに車が自動で走行して目的地に到達する、そんな乗り物を思い浮かべる人も多いはずだ。ではBMWが作ったこのR1200GSも、そんな「完全自動の乗り物」を目指しているのだろうか。
BMWモトラッドがこうした開発を行うのは、完全自律制御の自動運転バイクを作るためではない。その真の目的は「ライダーの運転支援技術」の研究なのだ。
これまでABSやトラクションコントロール、スタビリティコントロールなど様々な電子制御技術を世界に先駆けて市販車に採用してきたBMWモトラッド。これらはすべて、安全性と快適性を実現しながら、ライダーがよりライディングを楽しめるように生み出されてきたもの。
今回お披露目されたプロトタイプもその目的は同じ。BMWの自動走行バイクは、またがったら勝手に目的地まで運んでくれるという乗り物ではなく、主役はあくまでライダー。研究中の車体制御技術はすでに実用化された各種電子制御と同列の扱いにすぎない。
加速、減速、コーナーリング、停止。これらの基本動作を自動走行が可能なレベルにまで高めることで初めてライダーの走行支援ができる―これが彼らの考え方なのだろう。
<写真>走行状態から減速して停止する直前には車体右側に設けられた自動サイドスタンドが作動。車体が傾いて停車する状態まで完全に制御されている。
<写真>2018年9月のプロトタイプ発表時に公開された写真。トップケースとパニアケースの中にはデジタル機器がぎっしり詰め込まれている。
<写真>装置の詳細は一切明らかになっていないが、加速度センサーや傾斜センサーなど車体の状態を把握するあらゆる種類のセンサーが搭載されているはず。
<写真>現在ほとんどの上級モデルに電子制御サスペンション(ESA)を搭載するBMW。エンジンから足周りまで、すでに様々な電子制御を実用化していることも自動運転バイクの研究においては大きなアドバンテージだ。
「濡れた路面でも安心してブレーキをかけられる」「後輪がスリップしても転倒しづらい」など、電子制御の利点はライダーのスキルに関係なく、あらゆる状況で最適な結果を生み出すことだ。さらに、ヒューマンエラーを機械がそっと補ってくれて不安要素がなくなれば、ライディングはもっと楽しくなる。
自動運転バイクの研究でBMWの技術はさらに新しい領域へ入った。その研究成果が市販車にフィードバックされる日もそう遠くはないはずだ。
情報元=BMW Motorrad
Text/RyoTsuchiyama