2018年11月6日、BMW MotorradはEICMA2018(ミラノショー)のプレスカンファレンスで新型S1000RRを発表した。
エンジン、フレーム、外装とそのすべてを新たに設計した完全なる新型として登場したS1000RRは、先日発表されたR1250シリーズ同様に吸気カムにリフト量の異なる2つのカム山を設けた可変バルブタイミング機構「BMW ShiftCam」テクノロジーを採用し、最高出力は157kW(207hp)/13,500rpm、最大トルク113Nm/10,500rpmを発生する。
また、BMW Motorradはカンファレンスの席上にて、新型S1000RRで2019年シーズンからSBK(世界スーパーバイク選手権)にワークスとして復帰すると発表、世界中から集まった報道陣を驚かせた。
ここからは新型S1000RRが発表されたカンファレンスの模様と車体詳細について写真を中心にお届けする。
カンファレンスの最後に登場したS1000RR。装備重量(走行可能状態)は197kgで従来型より約10kg軽くなり、最高出力は従来型の199hpから207hpへと大幅に性能を向上させた。またトラクション&ウィリーコントロール、ABS、ヒルスタートコントロールなど各種エンジンメネジメントも大幅に進化して扱いやすさを向上させているという。
初代から非対称フロントマスクがアイデンティティだったS1000RRの顔はついに左右対称に。ヘッドライトにはLEDを採用する。
完全新設計のエンジンは従来型比で4kg軽量化されるとともにコンパクト化が図られた。
こちらはエンジンのカットモデル。クラッチレリーズはクラッチカバー真下にレイアウト。カムチェーンはサイレントチェーンを採用する。
可変バルブタイミング機構「BMW ShiftCam(シフトカム)」を採用するエンジンは、吸気側カムシャフトが軸方向にスライドすることによって、カム山を切り替える。S1000RRのエンジンではエンジン回転数が9,000rpmを越えるとバルブリフト量が最大となるカム山にシフト。それ以下の回転数ではバルブリフト量を抑えたカム山で走行する。
写真がBMW ShiftCamの特徴である吸気側カムシャフト。シリンダーヘッド上の左右に黒い樹脂部品の突起物が見えるがこれはアクチュエーター。このアクチュエーターからカムシャフトに切られたスパイラル状の溝へ向かってピンが繰り出すことで、カムシャフトが軸方向にスライドし、カム山の切り替えを行う。この機構によって低速域、中速域、高速域でのトルク・パワー特性を向上させているが、低速域、中速域では現行S1000Rのエンジンと同レベルのトルクを確保している。また、燃料消費率は従来型比で4%改善している。
倒立フォークはマルゾッキ製。ブレーキキャリパーはラジアルマウントの4ピストン。
スイングアームは逆トラス形状となった。写真は「M Performance Parts」を装着したオプション装着車でステップのほか、カーボンホイールを履いている。
こちらが純正オプション「M Performance」のカーボンホイール。新型S1000RRには「M Performance」のカーボンホイール、軽量バッテリーなどを装備した「Mパッケージ」と呼ばれるグレードが用意されており、車重はSTDの197kgから3.5kg減の193.5kgとなる。また、アルミ鍛造ホイールなどを装備したグレード「レースパッケージ」も用意されており、そちらの車重は195.4kg。
メーターはフルカラーの液晶パネル。
テールランプはウインカー一体型となった。写真はテールランプが点灯した状態。ウインカーはその内側となる。日本仕様でどうなるのかは現段階では不明。
左グリップにはメーターで各種操作を行うマルチセレクターを装備。削り出しのM Performanceレバーはオプション設定。
S1000RRの発表直後、BMW Motorrad は2019年シーズンからSBK(世界スーパーバイク選手権)へワークスとして復帰することをサプライズで発表! 2013年シーズンいっぱいでワークス活動を停止して以来の復帰となる。
ライダーは2018年シーズンまでカワサキワークスに所属していたトム・サイクス選手(写真中央)と、2018年のSTK1000(ヨーロピアン・スーパーストック選手権)でS1000RRを走らせてチャンピオンを獲得したマーカス・ライテルベルガー選手(左から2番目)の2名体制だ。
初代モデル登場から約10年、完全新設計で生まれ変わったS1000RRのさらなる詳細については、BMW専門サイトVIRGIN BMWでも追って紹介する。
Text&Photo/RyoTsuchiyama
取材協力/BMW Motorrad, ITA