2018年10月11日、2019年のSBK(世界スーパーバイク選手権)に関してFIM(国際モーターサイクリズム連盟)とSBK興行主のドルナが重要な発表を行った。
発表によると、2019年シーズンはSBK史上初となる「3レース制」を導入するというのだ。現在のSBKは土曜日にレース1、日曜日にレース2を行う「2レース制」を敷いている。新たに発表された「3レース制」は、土曜日14時にレース1を開催、翌日曜日11時にショートスプリントのレース2、14時にレース3を行うというもの。この3レース制については、ヨーロッパ中央時間(CET)内で開催されるすべてのレースに適用されるのだという。
SBKに関してはこれまでもレースフォーマットの変更が行われている。最近の大きな変更と言えば、2017年シーズンから導入された「リバースグリッド」だ。
これはレース1の結果をもとに、レース2でのグリッド順を入れ替えるシステム。具体的にはレース1で1位~3位を獲得したトップ3のライダーが3列目に下がり、レース1で4位~6位に入賞したライダーがスターティンググリッド1列目、7位~9位のライダーが2列目に並ぶというもの。これによりオーバーテイクの機会が増えてよりエキサイティングなレースが楽しめるという触れ込みではあったものの、一部ファンの間では「強すぎるカワサキを抑え込むためでは?」という憶測も流れたほど。
たしかにこのリバースグリッド導入によって、レース2冒頭から中盤にかけてのオーバーテイクは増えたが、ジョナサン・レイを擁するカワサキワークスチームの強さは相変わらずで、導入初年度の2017年はもちろん、今年もレイは4年連続のSBK年間チャンピオンのタイトルを獲得、カワサキの4年連続マニュファクチャラーズタイトル獲得もほぼ確実なところまで来ている。
ドルナの首脳によれば、3レース制の新フォーマットについては現在関係者などと最終調整中とのことだ。ただ、現段階では年間ラウンド数、各レースの周回数やポイント数、リバースグリッドの扱い、使用エンジン基数やタイヤ本数など、新フォーマット導入に伴ってなんらかの改定が加わるとも予想される細かなレギュレーション変更については明らかにされていない。
レースを長年観ている立場からすると3レース制導入への期待を持ちながらも、やはり心配な部分もある。例えばランキング争いをしているトップ選手がレース2で負傷してレース3も欠場となる場合、新フォーマットでのポイント割り振りによっては1度の週末でライバルと大きな差がついてしまい、結果的にチャンピオンシップがつまらなくなる可能性もあるのでは、という懸念も少なからずある。
現在3レース制の導入例としては、BSB(ブリティッシュ・スーパーバイク選手権)がある。といってもBSBで3レースが行われるのは最終戦のみ。世界選手権で、しかも年間を通じての3レース制の導入は前例がないように思う。新フォーマットはライダー、チームにかかる負担もそれなりにあると想像しているが、「新フォーマットは前々から計画していたこと」という首脳陣のコメントを見ると、関係者へのある程度の根回しも行っているようなので、こうした外野の心配は無用かもしれないけれど、ライダーへの配慮もしっかり行った上でレースがより面白くなるのなら、新フォーマットの導入は歓迎したいところだ。
2018年シーズンのSBKは今週末のアルゼンチンと最終戦のカタールを残すのみとなった。新しいレースフォーマットに関する各チーム・ライダーのコメントはまだ確認できていないが、週末のレースでは様々な意見が関係者の口から語られるはずだ。
情報元=WorldSBK.com
Text=RyoTsuchiyama