取材・写真・文 = 山下 剛
Pikes Peak International Hill Climb 2016
誰よりも早く雲の上のゴールへ
決勝に挑む日本人ライダーを応援しよう
4301mの頂上を目指すレース「パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム」(以下PPIHC)が今年で100周年を迎えた。四輪や二輪はもちろん三輪(サイドカー)やトラクターヘッドも走るアメリカらしいレースに、今年も日本から数人のチャレンジャーがコロラドスプリングスに渡り、雲の上を目指している。
二輪クラスに挑んでいるのは、サイドカーの渡辺正人選手・大関政広選手、ハスクバーナ701スーパーモトでミドルウェイトクラスに参戦する伊丹孝裕選手、電気バイククラスには岸本ヨシヒロ選手の3人だ。彼らはいずれもPPIHCに数度の挑戦を続けており、渡辺選手は4度目、大関選手は2度目、伊丹選手と岸本選手は3度目だ。
PPIHCのレースウィークは4日間の練習走行と予選、休息日をはさんでの決勝レースとなっている。練習走行は「ボトム」「ミドル」「アッパー」とコースを3分割して行い、二輪クラスは4日目のボトムが予選となり、決勝レースはこのタイム順の出走となる。
6月24日現在、予選走行を終えたわけだが、サイドカーの渡辺・大関組はかなりの苦戦を強いられた。というのは、初日からエンジンが始動しないトラブルに見舞われてしまい、3日間の練習走行にまったく参加できない事態になってしまったのだ。もちろんその都度修理を済ませ、エンジン始動に成功するのだが、出走前になるとエンジンがかからないというトラブルが続いてしまったのだ。
そして迎えた予選日。前日にエンジン修理を済ませていたのだが、またしてもレースコースに辿り着くとエンジンが始動しない。電装系をチェックするも原因を特定できずにいたが、伊丹選手のメカニックとして帯同していた大崎徹さんがその原因を吸気バルブにあると推測し、予備エンジンのシリンダーヘッドと交換。見事エンジン始動に成功し、渡辺・大関組の初走行となったのだった。エンジンがかかった瞬間、パドックでは他チームのエントラントが集まって拍手喝采が起き、彼らの初走行を祝った。
そしてぶっつけ本番の予選走行だったにもかかわらず、渡辺・大関組はトップタイムを叩き出し、ポールポジション(走行1番目)を獲得した。
「目標はレコードタイムを叩き出してのクラス優勝」
昨年は悪天候のためレースが中断、コース中間地点までのレースとなったため目標を達成できなかった渡辺選手。今年は雪辱のレースとなる。
伊丹選手は3日間の予選を順調にこなし、ハスクバーナ・701スーパーモトのセッティングも順調に進めてきた。練習走行2日目にはタイトコーナーの立ち上がりで転倒を喫したものの本人もマシンにもダメージはなく、予選日を迎えた。
「目標はクラス優勝」と伊丹選手は3度目のPPIHCにあたっての意気込みを語る。ミドルウェイトクラスにはアプリリア・SVX、トライアンフ・ストリートトリプル、ヤマハ・MT-07、MVアグスタ・F3 800といったマシンが揃う。パワーでは不利となるライバルもいるが、701スーパーモトの軽さは大きなアドバンテージだ。クラス優勝という目標は決して高望みではない。
しかし迎えた予選日の最終走行で、伊丹選手は痛恨の転倒。
「ABSはオンにしたまま走行していたところ、きつめのブレーキングでABSが作動してしまい、減速しきれずにエアバリアに衝突した」
幸い、伊丹選手にもマシンにも大きな打撃はなく、マシンは走行後すぐに大崎メカニックによって修理された。
昨年までは主宰する「チーム未来」として参戦し、クラス優勝を果たした岸本選手だが、今年は「KOMMIT EVT」として参戦する。これはチーム未来を中心として、アメリカのマサチューセッツ工科大学(MIT)、イギリス・ブルーネル大学教授が率いるEVチーム「KOMATTI」、スウェーデン王立工科大学からなるチームで、アメリカの電気バイクメーカー「ゼロ・モーターサイクル」の最新モデル「FXS」をベースとした電気バイクレーサーを製作して挑むものだ。
練習走行初日はモーターが始動できないトラブルが発生、走行できずに終えたものの、2日目はトラブルを解消して無事に走行を終え、好タイムを叩き出した。
「今年の目標は昨年のタイムを上回ること」
岸本選手はそう話す。電気バイククラスには今年のマン島TTで3位入賞を果たした「ビクトリー」が参戦しており、最強のライバルとなっている。
そして迎えた予選。岸本選手は順調にパイクスピークを駆け上がり、クラス2位となるタイムを記録して、決勝に臨むこととなった。
予選日の夕方は、コロラドスプリングス市内のダウンタウンを封鎖しての「ファンフェスタ」が行われ、大勢のファンや地元の人々が集まった。いずれの日本人チャレンジャーのブースにも多くの人たちが押し寄せ、サインをねだったり質問を浴びせたり、応援のメッセージを投げかけたりした。
決勝レースは6月26日午前8時30分スタート(日本時間26日午後11時30分)だ。彼らのフェイスブックにはレポートもアップされているので、ぜひ応援メッセージを書き込もう。もちろんレース結果は速報としてお伝えするので、彼らのチャレンジを見届けてほしい。