パイクスピーク・ヒルクライムに挑むサムライたち/渡辺正人(3)

掲載日: 2013年05月16日(木) 更新日: 2013年12月10日(火)
この記事は2013年5月16日当時の情報に基づいて制作されています。

取材・写真・文=山下剛

アメリカ・コロラドで開催される「パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム」は、1916年にはじまった歴史ある公道レースで、標高2800m地点をスタートし、4300mの頂上を目指す。ガードレールがない区間も多く、ひとつ間違えれば崖下に真っ逆さま……という過酷なレースに今年、2人のサムライが挑む。

5月7日、東京・品川にてサイドカーを梱包する渡辺さん。海外発送においては、このようにパレット(木枠の台)を作り、その上にサイドカーを固定する。今回はカウルと車体を別にした上で梱包する方法がとられた。

パイクスピーク・ヒルクライムに挑むサムライたち
~サイドカードライバー・渡辺正人~

梱包が完成した様子。下段にマシンが固定され、軽いカウルは上段に固定され、ラッピングされた。車体はタイダウンベルトで固定できるが、カウルが割れてしまうためこのような方法がとられたのだ。

サイドカーとレースの魅力、そして目標

16歳からバイクに乗りはじめ、モトクロスやエンデューロなどオフロードバイクに乗っていたという渡辺さんだが、行きつけのバイク屋の誘いでサイドカーでのレースをはじめた。

「バイクよりも路面に近いから、その怖さもおもしろさも倍増するんですね。また、パッセンジャーとの呼吸がひとつでもずれると、コースアウトや外壁への接触事故につながってしまう。その駆け引きもおもしろいですし、やりがいのある部分ですね」

今回のパイクスピークでコンビを組むのは、安田武司さん。1979年生まれの35歳で、パッセンジャーとして渡辺さんと走りはじめて5年目。二人のコンビで09~12年のF2クラスを連続制覇した実績を持っている。息はバッチリだ。

「目標はいくつかあります。まずひとつは、崖から落ちることなく完走すること。無事に帰国することです。ふたつめは、1000ccのマシンに勝つこと。僕のマシン『LCR-F2-KUMANO』はCBR600RRのエンジンを積んだサイドカーですから、排気量だけ考えれば不利です。だからこそコーナリングスピードでタイムを詰めていって、1000ccの連中を見返してやりたい。そう思ってるんです」

全面舗装となった昨年に記録されたコースレコードは、John-Thomas Woodが作った11分41秒406だ。それより短いタイムが、渡辺さんの目標タイムとなる。それはすなわちコースレコード樹立を意味する。勝算はあるのか。

「もちろん排気量があるほうが有利ですが、全面舗装となってまだ2年目。エントラントたちがコースをしっかり攻略できているわけではないし、僕たちも同じスタートラインに立てるということです」

パイクスピークは登山レースだけあって、テクニカルなコーナーが連続する。ストレート区間は短い。だからこそ日本のサーキット、そしてマン島で培ってきた渡辺さんのコーナリングテクニックを生かせる。歴史ある登山レースに「渡辺正人」と「安田武司」の名を残せるのか。日本人が初めて挑戦する舞台だからこそ、誰かの足跡はない。自ら考え、行動し、勝機を見つけていかなければならない。

「初めて出る海外レースなのにそんなこと言ってるのはおかしいんですかね(笑)。でもだからこそやりがいがあるんですよね」

渡辺さんはあははと豪快に笑いながらそう話す。その笑みはマン島TT完走、全日本F2で5年連続優勝という実績が生む自信にもとれるし、雪が積もった校庭に足跡を残して喜ぶ子の無邪気さにも見える。おそらく両方だろうし、他にもいろいろな感情が渡辺さんの心で渦巻いていることだろう。

「先日、現地へ向けてサイドカーをはじめとして工具やスペアパーツ、タイヤなどすべての備品を梱包して発送作業が終わりました。あと残っている準備は、日本にいる間はどれだけ身体を作れるか。出発日まで、順調にトレーニングを重ねていくだけです」

もちろん海外レースに参戦するには膨大な費用がかかる。渡辺さんは引き続きスポンサーを募集している。下記に掲載している「渡辺正人応援サイト」では、ネット上からの手続きでスポンサーになれるシステムがある。こんな時代だからこそ新たなことに挑戦する、その心意気に共感したなら、ぜひ渡辺さんを応援してみてはいかがだろう。

筆者もレースウィークから現地入りして、渡辺さんの活躍を取材・レポートする予定だ。渡辺さんの活躍に、ぜひ期待して注目してほしい。

「目標はサイドカーのコースレコードを作ること」と語る渡辺正人さん。6月11日に渡米し、15~16日に行なわれる公式練習に備える。レースは6月24日のブリーフィングからスタートし、30日に決勝が待っている!

●パイクスピーク・ヒルクライムに挑むサムライたち/渡辺正人(1)はコチラ
●パイクスピーク・ヒルクライムに挑むサムライたち/渡辺正人(2)はコチラ
●次回からは同じくパイクスピークにチャレンジする伊丹孝裕さんインタビューをお届けします

■関連リンク
Pikes Peak International Hill Climb
渡辺正人応援サイト
パイクスピークサイドカーチャレンジブログ

(バイクブロス・マガジンズ編集部)

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