取材・写真・文 = 山下剛
オーディトリウム渋谷での公開初日に行なわれたマン島TT完走ライダーによるトークショー。多聞恵美の司会進行で、マン島TTの魅力とは何かが語られた。
英王領マン島にて開催されている公道レース「マン島TT」を追ったドキュメンタリー映画『Closer to the Edge マン島TTライダー』が、東京・渋谷のオーディトリウム渋谷にて3月30日より公開されている。
1907年よりはじまった公道レースで世界でもっとも危険といわれ、昨今ではレース中止を求める声やスーパーバイククラスの再考を求める意見もあるロードレースだが、それだけにエントラントたちは生と死のせめぎあいの中で生きることの喜びと幸福を求めて走っている、そんなレースだ。
映画の舞台となるのは2010年のマン島TTだ。マン島TTライダーの中でも人気の高いガイ・マーティンを中心にカメラを回し、彼らがどんな思いでマン島TTを走っているのか、どんな思いを抱えて生きているのかを描き出す。
「イカれたヤツは目を見ればわかる。そんな奴らがマン島TTを走っているのさ」
歯に衣着せぬマーティンの言葉は、自らがそんなマン島TTライダーだからこそ生まれ、迫力を持って観る者につきつけられる。
公開初日には、マン島TT参戦経験のあるライダー2名によるトークショーが催された。登壇したのは今年4回目のマン島TTに挑戦する松下ヨシナリ、2010年に完走を果たした伊丹孝裕のふたりに加え、昨年マン島TTを取材訪問したこともあるモデライダー・多聞恵美。多聞の軽妙な進行でトークショーは進み、「僕は命を賭けてるわけじゃない。自分に対する挑戦の舞台がマン島TTであるというだけ」と松下が語れば、「ライダーたちの生きる様を見てもらいたい」と伊丹が応じた。
ちなみに松下と伊丹はともに「Team TROFE」なるチームを組んでいるが、いわゆるレーシングチームとは違い、同じレースにチームとして参戦しているわけではない。世界のレースに挑戦する志をもったライダーとして協力しあう関係といえるが、実は二人揃ってこうした舞台にたつのは初めてのことだ。
松下は5月15日よりマン島入りし、5月25日よりはじまるTTに備える。伊丹は今年、世界最速のヒルクライムレース「パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム」に参戦する。パイクスピークはアメリカ・コロラド州にあるパイクスピークの頂上まで駆け上がるレースで、日本からは「モンスター田島」の名で知られるドライバーが好成績を収め、現在は電気自動車で参戦して話題となっている。
「2011年からコースがすべて舗装されたことを受けて、やりがいのあるレースになったと思ったことが参戦のきっかけ」と伊丹は話す。マシンはトライアンフ・スピードトリプルRで、現在はトライアンフ横浜北にてスペシャルマシンへと改造中だという。参戦クラスは「Pikes Peak 1205」で、3気筒1205ccまでのマシンで争われる。近年はドゥカティ・ムルティストラーダ1200の独壇場となっており、3気筒マシンがどこまでLツインを追い込めるかに注目が集まる。
パイクスピークは5月24日から練習走行/予選がはじまり、30日に決勝レースが行われる。
松下のマン島TT、伊丹のパイクスピーク、ともに機会があれば詳細をお伝えしたい。
今年4回目のマン島TTに挑戦する松下ヨシナリ。レシプロエンジンクラス以外に電気バイククラスにも参戦が決まっている。
スピードトリプルRを駆り、パイクスピークヒルクライムへの挑戦を名言している伊丹孝裕。2010年にはマン島TTを完走している。
●『Closer to the Edge マン島TTライダー』公式サイト
http://www.laidback.co.jp/tt/
※上映スケジュール
オーディトリウム渋谷(東京) 4月26日(金)まで
シネマート心斎橋(大阪) 4月20日(土)より2週間
名古屋シネマテーク(愛知) 4月27日(土)~5月3日(金)
●Isle of Man TT Official site
http://www.iomtt.com/
●Pikes Peak International Hill Climb Official site
http://www.ppihc.com/