写真/渡辺 昌彦 取材・文/佐川 健太郎 衣装協力/KUSHITANI
今回のテーマはフルステアでのUターンです。ハンドルをストッパーに当たるまでフルに切れば当然小さく曲がれます。ただ実際にやろうとするとこれがなかなか難しい。理由としては、フルステアにするとそれ以上は切れないので、バイクが倒れそうになったときにハンドル操作でバランスを補正できないからです。狭い路地でUターンしようとして、それが原因で立ちゴケしそうになった経験はないでしょうか!? でも本来はハンドルを中途半端に切ってフラフラするよりも、最初からフルに切ってしまったほうが安定するものです。
そこで自分がいつもやっているのがフルステアのまま旋回する練習。そのためには前回もお伝えした低速バランスの3つの奥義、「スロットル一定」「半クラ一定」「リアブレーキによるパワー制御」は必須になります。無理をする必要はありません。理屈を知って実践を繰り返せば必ずできるようになりますので、安全な場所でトライしてみてください。
ポイントがいくつかあります。ひとつめは体の向きと顔の向き。ありがちなのがハンドルを切ろうとしても目線が向かないため、なかなかバイクが曲がっていかない例。特にUターンで小さく曲がりたいときは「上体をハンドルと平行に向ける」ことです。また、バイクは自分が見た方向に向かう乗り物です。Uターンの場合はハンドルを切ると同時に顔も90度ぐらい内側に向けるつもりで目線を送る。そこまで大胆にやると、ハンドルをフルには切りやすくなるはずです。
2つめのポイントはスロットルの「握り変え」です。皆さんも経験があると思いますが、ハンドルをフルに切ると腕が窮屈になるはずです。特にスーパースポーツなどハンドルが低い車種では手首がタンクに当たってスロットルも開けづらくなったりします。そこでスロットルを“斜め”に握ることで、ハンドルを切ったときに懐にも余裕が生まれてスロットル操作もしやすくなるはずです。
3つめが上体を少しだけイン側に入れた「直立リーンイン」のフォームです。バイクが曲がるとき通常は車体を傾けることで遠心力に対抗しますが、極低速域では速度が足りずバイクを寝かせられません。それでも旋回し始めれば多少なりとも遠心力がかかるため、車体を垂直に立てたまま自分の体をイン側に入れることで遠心力とつり合いを持たせるのが目的です。詳しくは下記の解説をご覧ください。動画も合わせてチェックしていただくと動きのイメージが分かりやすいと思います。
■上体ごと曲がりたい方向に向ける
フルステアで曲がるためにはフォームが大事。ポイントは曲がりたい方向に顔ごと上体を向けること。目安としては両肩のラインをハンドルと平行にするイメージ。顔はさらに車体に対して90度ぐらい向けることで目線に引っ張られるように曲がる。
腰(骨盤)から捻るように意識すると上半身全体を大きくスムーズに回していくことができる。脇は開けて懐を広く保つことで腕に余裕が生まれてセルフステアを生かしやすい。
脇を締めて腕を突っ張ってしまうと上体は回らず、ハンドルが切れず、顔も向けられず、旋回の妨げとなってしまう。Uターンでは曲がれるものも曲がれなくなる。
■ドライバーでネジを回すイメージで
グリップに対して斜めに軽く握ることで、ハンドルをフルに切っても肘が邪魔にならず懐に余裕が生まれる。特にUターン時はスロットル側の右手を握り変える周到さが必要。
ドライバーで小さなネジを回すイメージでスロットルグリップを握る。ネジ山を潰さないように優しく丁寧に緩めるイメージだ。
■車体を立てて上体をイン側に入れる
転倒リスクを極力減らしつつ小さく曲がれるのが、車体垂直でのフルステアターンだ。低速バランス3つの奥義で速度調整しつつ、上体を少しイン側に入れた「直立リーンイン」を組み合わせることで、バイクとライダーの重心が分散(V字バランス)して安定しやすくなる。しっかりニーグリップしてバイクとの一体感を高めるよう意識したい。