今日から使えるライディングテクニック実践講座【最新版 スマテク2.0】2.ブレーキング (3)曲がるためのブレーキング（動画あり）

写真／渡辺 昌彦　取材・文／佐川 健太郎　衣装協力／KUSHITANI

ブレーキとサスペンションの連携で
“曲がる”効果を引き出す

今回は曲がるためのブレーキングです。教習所などでは直線でブレーキを終わらせて、コーナーではブレーキをかけないと教わると思います。もちろん基本はそのとおり。その意味では今回の話は中上級者向けのテクニックと言えるかもしれません。

ブレーキには速度を調整したり止まったりするだけでなく、いろいろな活用法があります。例えばフロントブレーキは制動力の中心ですが、軽くかけることでフロントを沈めてキャスター角を立てて曲がりやすい状態にすることができます。使い方としてはコーナー進入時など。直線でフロントブレーキをかけて減速した後、いきなりレバーを離すのではなくじんわりと緩めながら倒し込んでいきます。これをリリースコントロールと言いますが、フォークが沈んだ前下がりの姿勢をキープしたままコーナーに入っていくことができます。

一方、リアブレーキには姿勢安定とパワー制御の機能があります。使い方としてはコーナーの立ち上がりなど。そのまま加速していくと外側にはみ出しそうなときなどに有効で、アクセルを開けながらリアブレーキでパワーを抑えることで、ラインをコンパクトにまとめることができます。また、速度が出やすい下りコーナーでもリアブレーキは便利。フロントをガツンとかけるのではなく、リアブレーキを軽くかけることで速度コントロールしやすくなります。下りは只でさえフロントが低い状態なので、そこでフロントブレーキをかけるとさらに前のめりになってバランスが悪くなりますが、リアブレーキを使えばリア車高を下げて安定させた状態で曲がることができます。このようにバイクは前後のブレーキとサスペンションを連携させて最大限の“曲がる”効果を発揮する乗り物なのです。

またブレーキの特殊な使い方として、Ｓ字コーナーなどで右左に切り返したいときにフロントを軽くかけることがあります。フロントブレーキには車体を起こす作用があるので、これを利用して寝ているバイクを素早く起こして切り返していくテクニックがあります。詳しくは下記の解説をご覧ください。動画も合わせてチェックしていただくと動きのイメージが分かりやすいと思います。

これを見れば完璧！止まるだけじゃない？”曲がる”ためのブレーキング！

Point1
「進入はリリースコントロールで曲げる」

■“じんわり”緩めつつ倒し込む
コーナーに向けて倒し込んでいくタイミングで“じんわり”とブレーキレバーを緩めていく。フロントフォークが沈み、キャスター角が立って、ホイールベースが短くなり、フロントタイヤに程よく荷重を残した曲がりやすい状態のままコーナーに進入できるメリットがある。「ブレーキを残しつつ」や「ブレーキを舐めながら」という表現はコレのこと。ただし完全に倒し込むまでにはレバーは離す。

Point2
「立ち上がりはリアブレーキでライン修正」

■スロットルを開けつつ“当てる”
コーナリング中に思った以上にラインが膨らんでしまいヒヤッとした経験があるはず。そんなときはリアブレーキによるパワー制御が有効だ。立ち上がりでスロットルを開けつつリアブレーキを軽く“当ててやる”感じ。ライン修正しやすく小さく曲がれる。スロットルオフからオンへの切り替えでもギクシャクしにくく、大排気量マシンでもパワーを抑えて早めに加速体勢に持ち込めるなどメリットは多い。

Point3
「下りコーナーはリアブレーキで姿勢安定」

■“引きずり“で速度コントロール
リアブレーキには速度調整とともに姿勢安定効果がある。特に有効なのが下りコーナー。ついスピードが出すぎてしまった場合など、リアブレーキを“引きずる”ことで速度コントロールがしやすくなる。リアサスを沈めて姿勢を安定させる効果もあるため、前のめりになりがちな下りでも使いやすい。車体が深くバンクしていてフロントブレーキを躊躇する場合にも有効だ。但し使いすぎるとフェードするので注意。

Point4
「S字はフロントブレーキで切り返す」

■“ちょいがけ“でキッカケを作る
曲がりくねったタイトなワインディングは腕の見せどころ。右から左へと素早く切り返したい場合など、フロントブレーキを一瞬かけることで寝ているバイクがひょいと起き上がる効果を利用するとタイミングを図りやすい。例えばS字コーナー。アクセルを開けて右コーナーを立ち上り、左コーナーに倒し込もうとする直前にフロントを“ちょいがけ”することで俊敏に切り返せる。同時に体重移動を加えるとさらに効果的。

スマテク2.0 講師 プロフィール

（バイクブロス・マガジンズ編集部）