2017年に誕生したZ900RSには驚きました。「Z1を復活させた」と、私には映ったからです。Z1は1972年に生まれたので、これで約50年間生き続けたことになります。
1982年生まれのGSX1100S KATANAも、2019年に「Katana」としてデビューするらしいので、40年近くは生きながらえることになります。
この2台と同じくらいの伝説を残しているNSR250Rは、1986年に初期型のMC16が誕生し、最終MC28が1999年に生産が終了して、それで終わっています。復活の兆しはありません。わずか13年の命でした。
ホンダはNSRを「復活させない」のではなく、「復活させられない」のではないでしょうか。NSRのエンジンが2ストだからです。
2ストは部品点数が少なく軽量化できるのですが、燃費が悪いし制御も効きにくいので劣ったエンジンと考えられています。
最先端を究めようとしているホンダが、過去のもので、しかも優れていないことが証明されている技術をリバイバルさせるわけにはいかないでしょう。
「NSR」という名前は、80年代と90年代に、世界のレースシーンで名を残し、日本の峠道で唯一無二の存在になりました。
つまり2ストエンジンは当時、世界最高の速く走る技術だったわけです。
2019年に49歳になる私は、NSRの活躍をリアルでみていました。
それで完全に心をつかまれてしまい、「中年男子のおもちゃ」として、わざわざ30年前のNSRを買ったのです。
カワサキとスズキが、Z1とカタナのリバイバルを決断したのは、空冷エンジンを水冷にするくらいの変更は、レガシーのアイデンティティを傷つけないと判断したからでしょう。
しかしホンダは、NSRを4ストエンジンでリバイバルさせるわけにはいきません。2ストエンジンであることがNSRの第一条件だからです。
2ストは走りに特化しすぎて、それ以外のものを置き去りにしてしまったエンジンなんですね。
これって悲しくないですか。世の中の事情で王者の価値がなくなるのって。
例えば野球のルールが急に「バットを使わないこと」となったら、バットの振り方が上手なイチローの価値は思いっきり減ってしまうのです。
しかし30年経ったいまも、私のNSRはビュンビュンに王者の走りをみせています。NSRに乗っていると、いたたまれなくなることがあります。