1980年代に思春期を迎えた人の多くは、ポップであることを重視しているような気がします。1980年に10歳になった私も、ついポップなものを選んでしまいます。
私のポップさの定義は、気持ちがよい、すぐにわかる、明るい色です。
音楽部門で最もポップに感じるのは、ヴァン・ヘイレンというロックバンドの「1984」というアルバムのなかのジャンプという曲です。
そしてもちろん、私の1989年型NSR250Rも、白地にたくさんの青いラインが入り、赤のアクセントが加わるので、ポップです。
このカラーリングはレーサーNSR250の外装がモチーフになっています。ちなみにレーサーのNSRには語尾にRがつきません。
NSR250のスポンサーだった味の素が当時「テラ(TERRA)」という飲料を出していて、そのイメージカラーが白と青だったのです。
白、青、赤で構成するトリコロールは、一瞬でポップだと思います。ポップ王国アメリカの国旗も、おしゃれ大国フランスの国旗も白、青、赤ですね。
ポップに接すると、気持ちが上がります。ポップは感覚に訴える力がありながら、芸術にありがちなお高くとまった感じとは無縁です。
ポップな商品は原価が安いことが多く、大量消費にも向いています。
このポップさをNSRが持っていることと、NSRが爆発的にヒットしたことは、無関係ではないような気がするんです。
私にとっての1980年代のバイクシーンは、レースと暴走族です。レースは正の遺産で、暴走族は負の遺産といえます。
レーサーレプリカのNSRは正の遺産に入りそうですが、ただ、サーキットで走るための性能をほぼそのまま公道に持ち込んだのですから、かなりアナーキーでもあります。
NSRは差し詰め、邪悪な心を持った正義のヒーローといったところでしょうか。その複雑なキャラクターも、ポップで包むととても身近な存在になるから不思議です。