勝っちゃん(41歳)は北海道釧路市に住む板金塗装職人で、バイクを4~5台持つ「多バイカー」です。しかもヤマハYZF-R1やドゥカティ・ポールスマートといった高級バイクもラインナップしているので、私は思わず「生活は大丈夫なんですか?」と尋ねてしまいました。勝っちゃんは「わはは、なんとかなりますよ」と笑っていました。
勝っちゃんに家計のやりくりを聞くと、確かになんとかなりそうな気がしてきました。なんといっても土地が有り余っている北海道に住んでいることが大きいようです。
勝っちゃん宅は、2階建て住宅に「自動車3台分の駐車場」と「ドッグランをつくれる庭」と「バイクを5台停めることができるバイク庫」がついて、家賃は10万円を大きく下回ります。しかも釧路は新鮮魚介類が格安で買えるなど、物価が安いのです。
その代わり勝っちゃんは、酒もタバコもバイク以外の趣味もまったくやりません。家も借家で我慢、バイク庫も手づくり、車検も自分で取ります。
生活を徹底的に簡素化してバイクに全精力を傾ける。多バイカーの鏡のような勝っちゃんですが、その代わりバイクにかける情熱は異常です。
勝っちゃんはツーリングに行くとき、ポールスマートまたはR1をトランスポーターに積み込んで目的地に行き、そこでバイクを降ろして周辺を走り回り、またトランポに積み込んで帰宅するのです。
「なぜそんなことをするんですか」と私。
「雨に濡らしたくないんですよね、バイクを」と勝っちゃん。
勝っちゃんは、バイク店主催の集団ツーリングにも参加しますが、ほとんどは1人で走るそうです。なぜなら、バイクで走りたくない道路は、絶対にバイクで走りたくないからです。
うーん、とうなってしまいました。巨体のマグロを買って大トロだけ食べて後は捨てちゃうような贅沢さ、とでも表現したらいいのでしょうか。
これだけバイクを大事にする勝っちゃんは、マイナス10度以下になる釧路の冬場は、バイクを自宅の居間に入れます。