パイクスピーク決勝直前レポート

掲載日: 2014年06月28日(土) 更新日: 2014年06月28日(土)
この記事は2014年6月28日当時の情報に基づいて制作されています。

取材・写真・文 = 山下 剛

Pikes Peak International Hill Climb 2014
4,300mの頂上を目指す5組の日本人たち

プラクティスがすべて終了、いよいよ決勝目前!

6月27日午前9時(現地時間)、パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム(PPIHC)は、練習走行と予選すべてのスケジュールを消化し、いよいよ残すは決勝レースのみとなった。

PPIHCのプラクティスウィーク(練習と予選)は4日間に渡って行われる。しかしスタートからゴールをすべて通して走ることはできず、「ボトム」「ミドル」「アッパー」と3区間に分けられたコースにてそれぞれ行われる。

練習と予選は二輪すべてのクラスが一斉走行となり、初日はアッパー、2日目はミドル、3日目アッパー、4日目ボトムというスケジュールで進む。このうち、予選走行となって決勝レースに影響するのはボトムセクションのみとなる。

PPIHCのコースはこの3セクションできれいに性格が分かれる。まずボトムは比較的なだらかなコーナーが連続するセクションで、日本の峠道にもよく似ている中速セクション。ミドルはヘアピンカーブが連続するセクションで、スピードこそ上がらないが一気に標高を上げるテクニカルなセクション。アッパーは森林限界を超えた3900m~4300mのセクションで、広大な岩山のなかをハイスピードで駆け上がるセクションとなっている。

PPIHC攻略のポイントは、ライダーがコースをいかに攻め込むかだけでなく、4000mに達する標高による気圧低下の影響を考慮した燃調のセッティングが重要になってくる。もちろん日本にはそのような場所はなく、セッティングデータは皆無に等しい。よって練習走行の間に吸排気系セッティングをどれだけ最適にもっていけるかが鍵なのだ。

そんな4日間を5組のエントラントたちはどのように過ごし、そして決勝を迎えているかを簡単にレポートしよう。

■伊丹孝裕選手(PikesPeak OPEN)

予選結果:04:41.529(総合16位、クラス9位)
今年が2回目の挑戦だけに、コース攻略については一歩先を行っている。しかしほぼフルノーマルといっていいMVアグスタ・F3の燃調が好調とはいえず、タイムに伸び悩んでいるようだ。

「エンジンは回ってくれるのだが、エンジンが持つ本来のパワーを発揮できていない。状況は厳しいが、やれるだけのことをやり、決勝に挑みます」

日本人勢の中では二輪総合ランキングのトップにつけているが、強豪がひしめくクラスだけに楽観視はできない。サスセッティングを煮詰め、コース完熟をさらに進めることで、さらなるタイムアップ、そして完走を目指す。

■渡辺正人・大関政広選手(PPC‐Sidecar)

予選結果:04:59.285(総合24位、クラス1位)
ドライバーの渡辺選手は2度目、パッセンジャーの大関選手は今年が初参戦となるが、走行こそしていないものの大関選手は昨年チームクルーとして参加してPPIHCがどんなレースであるかを知っている。このアドバンテージは大きい。そして今年はさらにマシン製作者である熊野正人氏をチームメカニックとして迎え、万全の体制で臨んだ。

「マシンの燃調や各ディメンションのセッティングが進み、かなりマシンにも慣れてきた。マシンの状態はとてもいいし、1000ccのパワーにもだいぶ慣れてきた。最新のセッティングで走行していないミドルセクションに不安はあるものの、マシンと人間ともに調子はいいです!」

狙うのはサイドカーのコースレコード。大胆かつ慎重な渡辺選手の走りと、それを支える大関選手の緻密で的確なサポート、そして熊野氏によるマシンセッティングは、目標をかなり現実的なものにしている。このまま順調に行けばコースレコード更新はほぼ確実だろう。

■岸本ヨシヒロ選手(Electric Modified Bike)

予選結果:05:11.672(総合42位、クラス1位)
自ら設計し、組み上げた電動バイク「TT零13改」とともに、今回はライダーとしても挑んでいる岸本選手。初めてのPPIHC参戦だが、練習と予選を着実に消化してきた。

「モーターの熱やバッテリー残量といった懸念材料は、当初予測していたものよりもイージーだった。もう少しパワーを上げたい気持ちはあるが、電欠(バッテリー残量がゼロになること)してしまうリスクが大きい。まずはきちんと完走することが目標のひとつなので、確実なセッティングで決勝に挑みたい」

チーム監督、コンストラクター、そしてライダーと岸本選手の役割は多く、連日の練習走行とマシン整備、セッティングに疲れも出てくる頃だが、持ち前のタフさがそれを感じさせない。レーシングミクが描かれたTT零13改とともに、4300mの頂上まで駆け上がることだろう。

■高野昌浩選手、新井泰緒選手(UTV/Exhibition)

予選結果:05:05.832(総合37位、クラス3位)=高野
    :05:02.447(総合32位、クラス2位)=新井

高野選手はZ1、新井選手はZ1000MK2という、いわゆるカワサキの旧車で参戦している両選手。彼らはブルーサンダースを中心とした熟練のメカニックたちによるマシンセッティングにより、この4日間で着実にマシンを仕上げた。

高野選手「コースはむずかしいですね。夜明けのアッパーは気温がとても低いし、キャブも吹けなくなる。でもセッティングは日に日に良くなってますし、おもしろさも高まってます」

新井選手「むずかしいコースですけど、おもしろい。セッティングは初期の狙いが当たっていて、大幅な変更は必要なかったですし、今はかなりいい状態に仕上がっていて気持ちよく走れてます」

新井選手のマシンで空燃比をチェックし、キャブレターセッティングをテストし、その結果を高野選手のマシンにフィードバックしている。ブルーサンダースの岩野氏を中心とした4人のメカニック陣が、二人のライダーを強力にサポートしている。いや、サポートというのでは適切な表現ではない。彼らのチームワークとレースを楽しむ姿勢は、誰もが主役であり誰もがサポート役でもある。

決勝レースは29日8時30分よりスタートする。日本時間では同日23時30分よりスタートする。決勝レースの結果は速報としてお伝えする予定なので、引き続きPPIHCに挑む彼らに注目してほしい!

~Pikes Peak International Hill Climb 2014 関連レポート~

■第1回 高野昌浩さん「無事に帰ることを目標に、アメリカのレースを楽しみたい」

■第2回 新井泰緒さん「パイクスピークに行くと決まってから夢が広がった」

■第3回 岸本ヨシヒロさん「TT零は自分が作ったバイクだからこそ、自分で走らせたい」

■第4回 渡辺正人さん、大関政広さん「目標はコースレコードの更新。総合順位での上も目指したい」

■第5回 伊丹孝裕さん「アスリートとして認められるレースに挑戦していきたい」

(バイクブロス・マガジンズ編集部)

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