パイクスピーク・4,300mの頂上を目指す5組の日本人たち(5)

掲載日: 2014年06月24日(火) 更新日: 2014年06月24日(火)
この記事は 2014年6月24日に書かれたもので、内容が古い可能性があります。

取材・写真・文 = 山下 剛

Pikes Peak International Hill Climb 2014
4,300mの頂上を目指す5組の日本人たち

アメリカ・コロラド州で開催される登山レース「パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム」は、2012年にコースが全面舗装化となり、様相が一変した。2013年は二輪クラスに2組の日本人が参戦して話題となったが、今年はさらに3組が増え、あわせて5組がエントリーしている。

彼らは、なぜわざわざ海外のレースに参戦するのか。どうしてパイクスピークに挑むのか。6月29日に行われる決勝レースまでの間、彼らのプロフィールを紹介するとともに、パイクスピークにかける彼らの意気込みを紹介しよう。

■第5回 伊丹孝裕さん
「アスリートとして認められるレースに挑戦していきたい」

マシン:MV Agusta F3-800
参戦クラス:Pikes Peak Open

フリーランスの二輪ライターである伊丹孝裕さんは、2010年にマン島TTスーパースポーツ(600cc)クラスに参戦、決勝の2レースを完走した実績を持つ国際ライダーでもある。昨年はパイクスピークに挑戦したが、決勝のコース序盤で痛恨の転倒によるリタイヤでレースを終えた。今年はまさしく雪辱戦だ。

「練習や予選走行では気づかなかったことですが、決勝になるとコースに沿って観客が大勢いるので、ずいぶんと景色が違ってくるんですね。全体の印象でコースを覚えていることもあってちょっと戸惑ったりもしましたけど、それでも緊張しすぎていたわけじゃなかったんですけどね。とにかく序盤で転倒してレースが終わってしまったのは悔しかったですよ」

マシンのダメージは大きかったが、伊丹さんに怪我がなかったのは幸いだった。レースが終わるまでピットに戻れず、コースサイドでずっとレースを見守ることしかできなかった悔しさは忘れられない。

「去年もそうでしたけど、今年はまず完走。これが目標です」

マシンは昨年のトライアンフ・スピードトリプルから、今年はMVアグスタ・F3-800にした。参戦クラスは「パイクスピーク・オープン」。大排気量マシンがひしめき、毎年好成績を収めている強豪がいるクラスだ。

「コース序盤から中盤まではタイトなコーナーも多く、とくに中盤のヘアピンコーナーの連続はマシンの軽さが生きてくるので、F3が合ってると考えてます。終盤のハイスピード区間もF3のパワーなら申し分ないですし、今年も上位を狙っていきたいです」

ドゥカティ・ムルティストラーダ1200Sを駆る上位常連ライダー、ミッキー・ダイモンドやブルーノ・ラングロアもこのクラス。ブルーノは今年、マシンを1199パニガーレSに変更した。相手に不足はない。

「大きな目標は3位です。もちろん、チャンスがあればもっと上を目指したい」

昨年同様、伊丹さんのマシンは市販ストック状態から大きなチューンやカスタマイズはしていない。今年はインジェクションチューンもせず、主だった変更点はタイヤ、ステップ、スプロケット、レーシングカウル、本国仕様のマフラーとECUといったところで、サスペンションやブレーキはノーマルのままだ。5月初旬、筑波コース1000にてシェイクダウンを済ませ、マシンの慣らしをしつつチューンした部分の感触を確かめた。

「まだ各部に硬さが残ってますが、船積みまでにもっと走り込んで慣らしておこうと思ってます。イタリアの公道仕様とはいえフルパワー仕様のエンジンはトルクもあるし、パンチもある。下から上までスムーズに回るし、かなり期待できるフィーリンだと思います」

ほぼすべてが上り勾配となる登山レースに合わせ、F3-675用スプロケットを流用して二次減速比を変更した。もうひとつの肝はタイヤのサイズ変更だという。

「ノーマルは180-55/17ですが、180/60-17として扁平率を低くすることでバンク中のタイヤ接地面積を稼げます。近頃の600ccクラスの主流ですね。それだけではなく、外径が大きくなることでリアが上がるため、フロントのトラクションも良くなります。上り勾配はフロントの接地が弱まりますから、その点でも有効かと」

これらの上り勾配対策がどこまで効果を発揮するかが大きな鍵といえるだろう。

「去年の感触からいってもこれでほぼ問題ないはずです。逆にいうと公道レースだからABSやトラクションコントロールといった電子制御は効果的でした」

このあたりのセッティングについては、現地での練習走行でさらに判断していく予定だという。

「パイクスピークは世界を見渡してみてもそうそうないユニークなレースだし、やり甲斐もあります。でもここだけではなく、マン島TTの再戦をはじめとして他のレースも視野に入れていきたい。アスリートとして認められるレースに挑戦したいですね。今年で43歳を迎えますが、45歳までは走っていたい」

昨年の雪辱を晴らし、目標を達成できるかどうか。伊丹さんをはじめとする6人のチャレンジャーたちから何かを感じたら、ぜひ注目してほしい。そして新たな行動の動機となればこれに勝る幸いはない。

29日の決勝レースの詳細と結果はこちらでも速報する予定だ。

伊丹さんとMVアグスタ・F3-800。パイクスピークは2年目の挑戦。今年はサミットでのチェッカーを受けるべく全力を尽くす。

5月9日、筑波コース1000にてシェイクダウン。慣らしが済んでおらずまだ硬さが残っていたが、感触は上々だったようだ。

MVアグスタ・F3-800。ゼッケンは昨年に続いて#50とした。これは3年前に逝去した友人、竹田津敏信さんへの思いを込めたものだ。

F3-800はタイヤ、排気系と燃調、二次減速比などの変更の他はほぼノーマルだ。

ステップはベビーフェイス製に換装。ちなみにベビーフェイスは「SATO RACING」としてアメリカでも好評のメーカーだ。

上り勾配とタイトコーナー対策としてスプロケットをF3-675用に換装して二次減速比をショート化した。

タイヤはピレリ・ディアブロスーパーコルサV2をチョイス。扁平率を60として外径を大きくして上り勾配に対応。バンク中の接地面積も広くなる。

~Pikes Peak International Hill Climb 2014 関連レポート~

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(バイクブロス・マガジンズ編集部)

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