パイクスピーク・ヒルクライムに挑むサムライたち/渡辺正人(2)

掲載日: 2013年05月08日(水) 更新日: 2013年12月10日(火)
この記事は 2013年5月8日に書かれたもので、内容が古い可能性があります。

取材・写真・文=山下剛

アメリカ・コロラドで開催される「パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム」は、1916年にはじまった歴史ある公道レースで、標高2,800m地点をスタートし、4,300mの頂上を目指す。ガードレールがない区間も多く、ひとつ間違えれば崖下に真っ逆さま・・・という過酷なレースに今年、2人のサムライが挑む。

マシン整備の仕上げとしてステッカーを貼る渡辺さん。LCRレーシング製マシンを「KUMANO Motorsport」(サイドカー世界選手権で活躍した名ドライバー・熊野正人さん。現在はドイツでサイドカー製作などを手がける)でチューニングしたマシンだ。

パイクスピーク・ヒルクライムに挑むサムライたち
~サイドカードライバー・渡辺正人~

タイヤはAVON製。レインタイヤ、インターミディエイト(柔らかめのスリックタイヤに溝を彫ったもの、2種類の硬さを用意)をはじめ、マシンに装着済みのものを入れて21本(!)を現地へ持っていく。容積を稼ぐために片側から中に押しこんでタイヤを潰すそうだ。

パイクスピークに向けての準備

パイクスピークが行われるのは標高2,800m以上の高地だから、気圧が低い。さらに標高4,300mのゴールへ向かって一気に駆け上がるため、高山病に見舞われる危険もある。気圧が低いということは酸素も薄く、激しいライディングでは酸欠状態に陥ることも想定しなければならない。

「現地でトレーニングと練習ができればベストですけど、そうもいきません。もちろん日本にそんな標高がある場所も限られてますし、理想的なトレーニングをするのはむずかしいですね」

エントリー申請は昨年からしていたが、受理されたのは今年2月になってからだった。準備期間も短い。練習やトレーニングの場所もない。

「高地トレーニング用のマスクを装着しながら腕立てや腹筋などをしたり、週に1回のペースで登山用品店にある低酸素ルームに入っての筋トレもしています。マスクは普段生活しているときも着けてたりするので、怪しい人になってますけど(笑)」

その他にも血中酸素測定器を使い、フィジカルコントロールをしている。参戦経験のある4輪ドライバーたちからも情報は集めているものの、パイクスピークにサイドカーで挑戦する日本人は渡辺さんが初めてだから、それについての情報やデータはほとんどない。半ば手探りでトレーニングを重ねている。だが、そうした過程の苦労も「挑戦することのおもしろさですから」と渡辺さんは笑う。

「肉体の順応も大切ですけど、マシンも高地用にチューニングが必要です。インジェクションコントロールとタイヤの空気圧ですね。とくにサイドカーのタイヤについての情報がほとんどないですし、現地で入手することができないので、日本からかなり多めに持っていくつもりです」

気圧が下がるにつれてタイヤの空気圧は上がるため、頂上付近でタイヤのグリップ力が落ちるし、セットを間違えれば最悪の場合バーストすることも考えられる。また、路面温度が下がることもタイヤのグリップ力を低下させてしまう。ここがパイクスピークのむずかしいところであり、他のレースにはないパイクスピークならではの妙でもある。

「タイヤの空気圧は1.0以下にセットしてのスタートになるので、タイヤが外れないようホイールにビードストッパーを入れました。こっちで準備できることは万全にしていきますが、あとは練習走行と予選でどれだけセッティングを合わせられるか。そこがまず勝負ですね」

インジェクションにはサブコン(Rapid Bike)をセットして、気圧変化に合わせて走行中でもマッピングを変えられるようにした。

「予選走行は6月25日からはじまり、決勝レースは30日ですが、11日に現地入りしてコースの下見や高地順応して体を作りながら、15日と16日にある練習走行に備える予定です」

練習と予選でコースを走れるものの、グループに分かれてセクションごとの走行となる。スタートからゴールまでを通して走れるのは決勝の1回のみだ。

「マシンはエンジンをオーバーホールしてカウル補修をして、やれることはやりました。5月7日に現地へ向けて船便の積み込みです」

渡米までは低酸素ルームやマスクを使ってのトレーニングに励む。40代最後の挑戦はもうすぐ本番を迎える。

マシンにはHonda CBR600RRのエンジンが搭載されている。ニーラー(レーシングサイドカーの呼称)のフレームに収めるため、ヘッドとオイルパンの一部を削っている。これは予備として持ち込むエンジン。

●次回は「サイドカーとレースの魅力、そして目標」をお届けします
●渡辺正人さんの前回の記事「なぜパイクスピークだったのか」はコチラ

■関連リンク
Pikes Peak International Hill Climb
渡辺正人応援サイト
パイクスピークサイドカーチャレンジブログ

(バイクブロス・マガジンズ編集部)

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